4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

売上高

10,699

11,865

1,165

10.9%

売上原価

9,503

9,909

405

4.3%

販売費及び一般管理費

1,786

1,863

76

4.3%

営業利益又は営業損失(△)

△ 590

92

683

経常利益又は経常損失(△)

△ 328

438

766

親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)

△ 192

416

609

 

 

当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症が縮小し、まん延防止等重点措置が解除されたことで、社会経済活動が正常化に向かい、個人消費を中心に緩やかな景気回復となりました。

一方、ロシアとウクライナの戦況の長期化や、サプライチェーンの混乱により、資源価格や原材料価格の高止まりでインフレ状況が続いております。世界各国では、インフレを抑制するための金融引締により世界経済は後退懸念のなか、欧米の金融機関の破綻などもあり日本経済は先行き不透明な状況となっております。

当社グループの主たる事業である曳船事業を取り巻く状況につきましては、前年度の第4四半期後半から曳船作業対象船舶のうち自動車専用船、コンテナ船、危険物積載船に持ち直し傾向がみられ、2022年11月からの港湾曳船料率値上げにより収益は改善しました。また、前年度の第1四半期から始まった建設用の洋上風力発電交通船(CTV)が稼働期間と投入隻数の増加により増収となりました。

旅客船事業では、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前期の反動により増収となったものの、2022年4月に発生した観光船沈没事故の風評被害や山下公園発着所の一時閉鎖もありコロナ禍前の水準には届いておりません。

このような経済環境のなかで、当社グループは総力を挙げて業績向上に努めた結果、売上高は1,165百万円増加し11,865百万円(前期比10.9%増)となりました。

利益面では、上昇基調で推移していた原油価格は、昨年6月以降下落に転じロシアのウクライナへの侵攻前の水準に戻ったものの、円安が進んだことで燃料費はグループ全体で88百万円(前期比8.0%増)の増加となりました。また、洋上風力発電交通船(CTV)の稼働期間の増加と裸用船曳船の新造船への代替により用船料が増加いたしました。この結果、92百万円の営業利益(前期は590百万円の営業損失)となり、受取配当金や持分法による投資利益の増加で経常利益は438百万円(前期は328百万円の経常損失)となりました。 

親会社株主に帰属する当期純利益は、曳船2隻を売却し固定資産売却益304百万円を計上した一方、固定資産撤去費用引当金繰入額が92百万円発生し416百万円(前期は192百万円の当期純損失)となりました。

 

 

セグメント別の売上高(上段)及び営業損益(下段)の概況は下記のとおりです。

(単位:百万円)

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

曳船事業

8,648

9,269

620

7.2%

△ 0

316

317

旅客船事業

1,605

2,067

461

28.7%

△ 555

△ 234

320

売店・食堂事業

444

528

83

18.8%

△ 35

△ 10

25

 

(注)売上高は外部顧客に対する売上高を表示しております。

 

曳船事業

曳船事業は、横浜川崎地区では、作業対象船舶のうちコンテナ船は世界的な港湾機能の混乱が正常化に向かい、自動車専用船にも底打ち感が見られ、11月からの港湾曳船料率値上げ効果もあり増収となりました。作業対象船舶がコンテナ船中心である東京地区でも同様に、12月からの値上げが奏功し増収となりました。横須賀地区では、エスコート作業の対象となるコンテナ船、タンカーの入港数が増加し、特殊警戒作業等も発生し増収となりました。千葉地区では、前半はエネルギー需要を背景に危険物積載船の入港数が増加しましたが、9月後半以降はほぼ全ての船種が減少に転じ前期並みとなりました。

また、秋田港・能代港での建設用の洋上風力発電交通船(CTV)は、前期に比べ稼働期間と投入隻数の増加により増収となりました。

この結果、曳船事業セグメントの売上高は620百万円増加し9,269百万円(前期比7.2%増)となり、316百万円の営業利益(前期は0.5百万円の営業損失)となりました。

 

旅客船事業

旅客船事業は、横浜港における観光船部門では、前年度は自粛要請で低迷していた反動から観光客が増加し増収にはなりましたが、山下公園発着所改修工事に伴う一時閉鎖がマイナス要因となり、さらに8月のお盆期間中と9月中旬以降シルバーウィークにかけての観光需要期に悪天候が重なり利用客は低迷いたしました。

久里浜・金谷間を結ぶカーフェリー部門でも同様に、前年度の自粛からの反動要因と4月からの値上げ効果もあり増収にはなりましたが、天候不順に加えガソリン価格高騰の煽りを受けマイカーでの利用客需要に水を差す結果となりました。

この結果、旅客船事業セグメントの売上高は461百万円増加し2,067百万円(前期比28.7%増)となりましたが、234百万円の営業損失(前期は555百万円の営業損失)となりました。

 

売店・食堂事業

売店・食堂事業は、新メニューを投入しサービス向上を図り値上げを実施したことや、マイクロツーリズムの流れを受け利用客が増え増収となりましたが、コロナ禍前の水準には届きませんでした。

この結果、売店・食堂事業セグメントの売上高は83百万円増加し528百万円(前期比18.8%増)となりましたが、10百万円の営業損失(前期は35百万円の営業損失)となりました。

 

 

②財政状態の概況

資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ231百万円減少し28,673百万円となりました。

流動資産の部では、現金及び預金は757百万円減少し、その他流動資産が347百万円減少いたしました。固定資産の部では、曳船の代替船建造により船舶が442百万円、関係会社株式が268百万円、長期預金が300百万円それぞれ増加いたしました。

負債は、前連結会計年度末に比べ、822百万円減少し7,021百万円となりました。流動負債の部では、支払手形及び買掛金が125百万円減少し、その他流動負債が281百万円減少いたしました。固定負債の部では、リース債務がリース契約の解約と返済により431百万円減少いたしました。

純資産は、前連結会計年度末に比べ、591百万円増加し21,652百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益が416百万円となり、剰余金の配当を99百万円実施したことにより利益剰余金が316百万円増加し、為替換算調整勘定が158百万円増加したことによるものです。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の69.8%から72.3%と2.5ポイント増加いたしました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,257百万円減少し5,236百万円となりました。

(単位:百万円)

科目

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

現金及び現金同等物の期首残高

4,152

6,494

2,341

Ⅰ.営業活動によるキャッシュ・フロー

1,272

1,502

230

Ⅱ.投資活動によるキャッシュ・フロー

△ 348

△ 2,728

△ 2,380

Ⅲ.財務活動によるキャッシュ・フロー

1,415

△ 31

△ 1,446

現金及び現金同等物の増加額(△は減少)

2,338

△ 1,257

△ 3,596

合併に伴う現金及び現金同等物の増加額

3

△ 3

現金及び現金同等物の期末残高

6,494

5,236

△ 1,257

 

 

当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりとなりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ230百万円増加し1,502百万円の資金取得となりました。資金収支の主な内訳は、税金等調整前当期純利益が579百万円となり、減価償却費が1,267百万円、法人税等の支払額が166百万円発生したことです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2,380百万円支出が増加し2,728百万円の資金支出となりました。資金収支の主な内訳は、設備更新(曳船の代替)の建造により有形固定資産取得による支出が2,525百万円発生しましたが、有形固定資産売却による収入が630百万円、預入期間が3カ月を超える定期預金の預入による支出が払戻による収入を800百万円上回りました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,446百万円減少し31百万円の資金支出となりました。資金収支の主な内訳は、セール・アンド・リースバックによる収入が420百万円、長期借入金を109百万円返済し、リース債務の返済が172百万円、配当金の支払額が99百万円発生したことです。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

当社グループの報告セグメントは、曳船事業、旅客船事業、売店・食堂事業であり、生産及び受注を伴う事業ではないため生産及び受注の実績については記載を省略し、販売の実績については「①経営成績の状況」におけるセグメント別の経営成績に関連付けて記載しております。

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

東京湾海事事業協同組合

1,230,351

11.50

1,289,428

10.87

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点における当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

A.経営成績

(売上高)

当社グループ全体の売上高は、1,165百万円増加し11,865百万円(前期比10.9%増)となりました。

曳船事業において、横浜川崎地区では昨年度、新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に混乱していた港湾機能が正常化に向かい、コンテナ船の入出港数が回復し、自動車専用船の入出港数も復調傾向となりました。

さらに、同地区では昨年11月から、東京地区では12月から港湾曳船料率が改定されたこともあり増収となりました。

横須賀地区では、夏場の電力需要からエスコート作業の対象のLNG船等の危険物積載船の入港数が増加し、さらに、コンテナ船の入出港数の増加や特殊警戒作業も発生したことで増収となりました。

一方、千葉地区では前半はエネルギー需要を背景にタンカー等の危険物積載船が増加しましたが、9月末以降ほぼ全ての船種が前期に比べ減少に転じ、港湾曳船料率の値上げ効果が打消される水準となりました。

また、今期に入り秋田港・能代港で建設用の洋上風力発電交通船(CTV)の稼働が本格化し、稼働期間と投入隻数の増加により増収となりました。

旅客船事業においては、新型コロナウイルス感染症が収束に向かい、その反動要因で大幅な増収となりましたが、8割程度の回復にとどまりました。

横浜港の観光船部門では、山下公園発着所の老朽化により改修工事のため閉鎖した影響で、利用客の取込みに苦戦いたしました。これに加え、昨年4月の知床観光船沈没事故の風評被害や観光需要期の夏場から秋口の天候不順も重なり本格的な回復とはなりませんでした。

久里浜・金谷間を結ぶカーフェリー部門では、期初から値上げを実施しましたが、上記の天候不順に加えガソリン価格高騰の煽りを受けマイカー利用客需要に水を差す結果となりました。

カーフェリーに附随する売店・食堂事業でも同様に値上げを実施し、新メニューを投入し営業強化を図り、マイクロツーリズムの効果が出はじめ増収にはなりましたが、団体客の低迷が続き本格的な回復にはいたりませんでした。

 

 

(営業利益)

売上原価は、9,909百万円(前期比4.3%増)となりました。当社グループの業績に大きく影響を与える原油価格は、ロシアのウクライナへの侵攻前の水準に戻ったものの、燃料油調達価格は円安により高止まりの状況で推移し、また、用船料は裸用船曳船の新造船への代替に加え、洋上風力発電交通船(CTV)が稼働期間と投入隻数増加により増加いたしました。

一方、退職給付引当金の計上方法に簡便法を採用している連結子会社では、割引率の上昇により退職給付債務が圧縮され退職給付引当金繰入額が減少したこともあり、営業損益は前期に比べ683百万円改善し92百万円の営業利益(前期は590百万円の営業損失)となりました。

曳船事業セグメントでは、燃料費が68百万円、用船料が110百万円増加しましたが、316百万円の営業利益(前期は0.5百万円の営業損失)となりました。

旅客船事業セグメントでは、インフレが進行し食材費の増加に加え燃料費や修繕費が増加し、前期に比べ増収とはなりましたが、234百万円の営業損失(前期は555百万円の営業損失)となりました。

売店・食堂事業セグメントでは、前期に比べ増収にはなりましたが、本格的な回復には至らず10百万円の営業損失(前期は35百万円の営業損失)となりました。

 

(経常利益)

経常損益は、受取配当金が94百万円(前期比36百万円増加)、持分法による投資利益が194百万円(前期比95百万円増加)計上され、前期に比べ766百万円改善し438百万円の経常利益(前期は328百万円の経常損失)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は、曳船2隻を売却し固定資産売却益を304百万円計上し、横浜港の観光船部門で、山下公園発着所の改修工事に伴い固定資産撤去費用引当金繰入額が92百万円発生しましたが、前期に比べ609百万円改善し416百万円の最終利益(前期は192百万円の最終損失)となりました。

 

B.財政状態

財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、営業原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、主に曳船の設備更新です。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては自己資金及びファイナンス・リースを基本としております。

2022年12月竣工した電気推進曳船の建造計画の資金手当では、自己資金により建造し、2024年3月期に国庫補助金を受領し建造船価に充当する予定です。

重要な設備投資等の予定及びその資金調達方法については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に係る会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

 

 

④次期の見通しについて

今後の見通しにつきましては、当社グループの業績に大きく影響を与える原油価格は、足元ではロシアのウクライナへの侵攻前の水準に戻ったものの、円安傾向が続くとの観測に加え、OPECプラスの減産継続や地政学リスクを背景に当面高値圏で推移する模様で非常に厳しい状況が予想されます。

曳船事業においては、2022年11月から港湾曳船料率の値上げ効果が年間を通じて寄与し、さらに水際対策の緩和から曳船作業対象船舶のうち大型客船の入港数が大幅に増える模様で、進路警戒作業やハーバー作業が回復し収益改善効果が期待されます。

また、需要に合わせた最適な船隊規模への調整を進めていくと同時に、運航コストの上昇に見合ったエスコート作業及び湾口水先艇作業の作業料金の見直しもさらに進めていく計画です。

一方、旅客船事業においては、定期航路以外で各種イベント企画を拡充し集客を図っていく計画ですが、消費者物価の高騰が顕著となっており、消費マインドの冷え込みが懸念されます。

通期の連結業績予想につきましては、売上高を12,088百万円、営業利益470百万円、経常利益634百万円、親会社株主に帰属する当期純利益674百万円を予想しております。