文中の将来に関する情報は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
業績等の概要
(1)業績
当事業年度におけるわが国経済は、製造業を中心に弱さがみられるものの、雇用環境の改善や堅調な企業業績に支えられ緩やかな回復基調で推移しておりましたが、世界経済において、長期化する米中貿易摩擦の世界経済への影響、英国のEU離脱問題、日韓問題等の海外リスクの高まりに加え、年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に及ぼす懸念も日に日に高まりを見せており、今後の先行きには予断を許さない状況となっております。国内大手メーカーでは、先進技術に対応するための研究開発投資、及び人手不足に対応するための省力化投資、並びに老朽化した設備の更新等を積極化しており、『マニュアルを「本当に使えるもの」にし、「無駄な経費・工数のかからない」品質の高いマニュアルの普及に努める』という当社の使命と市場ニーズとの適合性が高まっております。
このような経済環境の下、当社では、付加価値の高い製品・サービスの提供に積極的に取り組み、受注・売上・収益の拡大に努めてまいりました。
経営戦略につきましては、当社の主力サービスである「e-manual」の導入促進を積極的に図った結果、「e-manual」の導入社数は50社となりました。今後もより一層、「e-manual」「GRACE VISION®」の普及に努めてまいります。2019年11月に設立した米国子会社 GraceVision Inc.につきましては、米国内での新型コロナウイルスの感染拡大により、現在、稼働を停止しておりますが、引き続き、今後の感染拡大状況の把握に努めてまいります。
成長のスピードを速めるために、シナジー効果が期待できる企業へのM&Aや事業提携等を引き続き積極的に検討しておりますが、内容の精査につきましては、慎重に行ってまいります。
技術面につきましては、「e-manual」及び「完全誘導型AIマニュアル」である「GRACE VISION®」の機能向上に引き続き取り組んでおります。
営業面につきましては、メーカーの「高品質なマニュアル」への要求の高まりから、コンサルティング案件及び「e-manual」の導入社数が増加いたしました。また、複数のメーカーにプロトタイプ版「GRACE VISION®」を納入し、引き合いも増加してきております。今後も「GRACE VISION®」の拡販及び対応分野・業界の拡大に努めてまいります。
なお、当事業年度における、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する当社財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況、販売実績等に及ぼす影響は僅少であります。
以上の結果、当事業年度における業績は、売上高1,903,678千円(前年同期比24.9%増)、経常利益947,420千円(同65.3%増)、当期純利益659,776千円(同75.8%増)となりました。
当事業年度の業績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
① MMS事業
MMS事業においては、上記のとおり、「e-manual」サービスの導入促進及びコンサルティング案件の獲得を積極的に図った結果、売上高1,204,942千円(前年同期比32.2%増)、セグメント利益833,205千円(同81.6%増)となりました。
② MOS事業
MOS事業においては、既存顧客への積極的な是正提案及び問い合わせ等の新規顧客の取り込みを進めた結果、売上高698,735千円(前年同期比14.0%増)、セグメント利益385,926千円(同6.7%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)の残高は、前事業年度末と比較し326,732千円増加し、1,641,569千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は361,472千円(前事業年度は283,394千円の増加)となりました。これは、税引前当期純利益947,420千円の計上等による資金の増加があった一方で、売上債権の増加額408,579千円、法人税等の支払額229,554千円等による資金の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は111,632千円(前事業年度は8,026千円の減少)となりました。これは、定期預金の預入による支出100,000千円、固定資産の取得による支出7,228千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増加は76,892千円(前事業年度は91,236千円の減少)となりました。これは、配当金の支払額96,467千円、社債の償還による支出30,000千円等による資金の減少があった一方で、新株予約権の行使による株式の発行による収入221,019千円等による資金の増加によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
MMS事業 | 184,626 | △38.8 |
MOS事業 | 204,305 | 37.0 |
合計 | 388,932 | △13.7 |
(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)受注実績
当社の取引は、受注から売上計上までの期間が比較的短く、また、企画・構成、編集、制作及び翻訳の途中で仕様変更・内容変更が発生する場合もあるため、受注実績の記載を省略しております。
(3)販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
MMS事業 | 1,204,942 | 32.2 |
MOS事業 | 698,735 | 14.0 |
合計 | 1,903,678 | 24.9 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
| 前事業年度 | 当事業年度 | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
東芝インフォメーションシステムズ株式会社 | - | - | 357,050 | 18.8 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
下記文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1)財政状態の分析
当事業年度末の総資産は2,762,393千円となり、前事業年度末に比べて919,596千円の増加となりました。
(流動資産)
流動資産は2,675,063千円となり、前事業年度末に比べて894,723千円増加となりました。これは主に、現金及び預金が426,733千円、売掛金が407,450千円、未収入金が52,217千円増加したことによるものであります。
(固定資産)
固定資産は87,329千円となり、前事業年度末に比べて24,872千円増加となりました。これは主に、有形固定資産が28,484千円増加したことによるものであります。
(流動負債)
流動負債は500,137千円となり、前事業年度末に比べて177,140千円増加となりました。これは主に、未払法人税等が67,606千円、未払金が62,041千円、未払消費税等が34,016千円増加したことによるものであります。
(固定負債)
固定負債は24,882千円となり、前事業年度末に比べて41,350千円減少となりました。これは主に、社債が30,000千円、長期借入金が9,996千円減少したことによるものであります。
(純資産)
純資産合計は2,237,373千円となり、前事業年度末に比べて783,806千円増加となりました。これは主に、新株予約権の行使により資本金が111,670千円、資本準備金が111,670千円増加したこと、及び当期純利益の計上等に伴い利益剰余金の額が563,009千円増加したことによるものであります。
(2)経営成績の分析
① 売上高
売上高は1,903,678千円(前事業年度比24.9%増)となりました。主な要因として重点顧客へ積極的な営業活動を実施し、大口顧客獲得に成功した結果です。
② 売上原価、売上総利益
売上原価は389,289千円(前事業年度比13.7%減)となりました。これは主に外注費の削減によるものです。この結果、売上総利益は1,514,388千円(前事業年度比41.1%増)となりました。
③ 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は560,452千円(前事業年度比12.6%増)となりました。これは主に人件費増加によるものです。この結果、営業利益は953,936千円(前事業年度比65.7%増)となりました。
④ 営業外収益、営業外費用及び経常利益
営業外収益は主として受取利息であり、15千円(前事業年度比22.3%増)となり、営業外費用は主として売上債権売却損であり、6,530千円(前事業年度比168.7%増)となり、この結果、経常利益は947,420千円(前事業年度比65.3%増)となりました。
⑤ 当期純利益
税引前当期純利益は947,420千円(前事業年度65.3%増)となり、法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額の計上により、当期純利益は659,776千円(前事業年度比75.8%増)となりました。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、登録スタッフであるマニュアルのテクニカルライター・翻訳者等への外注費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に「e-manual」や「GRACE VISION®」のソフトウェア開発等の無形固定資産への投資等によるものであります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当事業年度末におけるリース債務を含む有利子負債の残高は76,886千円、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,641,569千円となっております。
(4)経営戦略の現状と見通し
当社は、「世界一の“わかる”を創り出す企業」を目指すという経営目標のもとで、マニュアルを通じて、メーカーとユーザー、人と人、企業と人をつなぐコミュニケーションビジネスを展開し、形や常識とされる既成概念に捉われず、「解る」・「理解できる」を追求することで、当社に心底傾倒し、お客様自身の体制をも変化させていただけるような、絶大なる支持を得られるように事業展開を行っております。
具体的には、国内・国外のメーカーを中心に、産業機械などの工業製品や会計システムなどの情報サービスソフトウェアに付随する操作系マニュアル、運用系マニュアルや、各企業における業務系マニュアルまで、お客様の目的に合致した技術マニュアルをコアに、各種マニュアルの管理・配信・閲覧・制作を支援する「e-manual」の企画、導入コンサルティング及び運営のサービスを提供するMMS事業と、エンドユーザーの立場に立って、ユーザーログの分析をベースとしたテクニカルライティング(原稿執筆)を行うとともに、輸出対象国の言語に翻訳(多言語化)する等のサービスを提供するMOS事業を展開しております。
2018年1月には、これまでのテクニカルライティングの手法を踏まえ、読むことも、見ることも、覚える必要もない、従来にはない全く新しい完全誘導型AIマニュアル「GRACE VISION®」を発表して、更なる「解る」・「理解できる」の追求に邁進しています。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
当社経営陣は、急速な業界環境や経済動向の変化に対応するため、当社事業のあるべき将来像を描き、収益機会を創造し、明確な目標設定を基本とする戦略的事業展開を推進し、これらの変化を的確に捉え、時に先取りして、入手可能な情報に基づき最善の経営意思決定をするように努めております。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、今後の世界経済の先行きへの懸念が非常に高まっております。当社の主要ターゲットである国内大手メーカーは、引き続き厳しい経営環境に置かれておりますが、当社においては、マニュアルのプロとして、ドキュメントコンサルティング、マニュアル制作及び「e-manual」の導入促進とあわせ、「GRACE VISION®」を積極的に販売することにより、技術伝承、人手不足及びコストダウンなど、国内大手メーカーの生産性向上を支援してまいります。
これまでのところ、当社の業績に大きな変調は見受けられません。今後、感染症の影響が長期化した場合は、収益が減少する可能性がありますが、そのような状況下においても、当社は生産性の向上とコストダウン等の対策を実施し、収益減少を最小限に抑えるよう努めてまいります。
なお、今後の解決すべき主たる重点課題及び今後の方針等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項目をご参照下さい。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たりましては、引当金の計上など一部に将来の合理的な見積りが求められているものもあります。これらの見積りは当社における過去の実績・現状・将来の計画を考慮し、合理的と考えられる事項に基づき判断しておりますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。なお、重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1財務諸表等 注記事項追加情報」に記載のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。