(1)経営成績等の状況の概要
①業績
当連結会計年度における世界経済は、諸外国で金融引き締めが進み、米国ではシリコンバレー銀行などが破綻し、欧州ではUBSがクレディ・スイスの救済合併を発表しました。わが国では、日本銀行が金融緩和を継続したため、内外金利差により外国為替市場で円安が進行しました。ウクライナ戦争が長期化して電力・エネルギー価格が高騰したため、国内企業物価は10%上昇し、消費者物価も4%上昇しました。コロナ禍で海外からの部品の調達難と半導体不足が長期化し、自動車をはじめとする様々な業界で生産活動が制約されました。
このような経営環境の下、当社グループは各種仕入価格が上昇したため、その一部を販売価格に転嫁すべく注力しました。また、当社の連結子会社のシーケー金属株式会社は、2022年7月にステンレス配管に使用する拡管式接合の継手「TLジョイント」を発売しました。
当社グループの連結業績については、銅相場が前年同期と比較して高い水準であったため、売上高は1,238億38百万円(前年同期比7.4%増加)となり、営業利益は82億79百万円(同23.1%減少)となりました。営業外損益として、デリバティブ利益が5億37百万円、デリバティブ評価益が77百万円発生したため、経常利益は86億55百万円(同31.7%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は53億18百万円(同23.3%増加)となりました。
各セグメントの業績は、次のとおりであります。
伸銅
伸銅事業では、販売量は10万4,859トン(前年同期比6.4%減少)、売上高は1,061億52百万円(同5.8%増加)となり、セグメント損益は56億17百万円のセグメント利益(同35.8%減少)となりました。
精密部品
精密部品事業では、売上高は59億91百万円(前年同期比17.4%増加)となり、セグメント損益は5億68百万円のセグメント利益(同33.6%増加)となりました。
配管・鍍金
配管・鍍金事業では、売上高は116億94百万円(前年同期比17.7%増加)となり、セグメント損益は17億77百万円のセグメント利益(同38.2%増加)となりました。
②キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、有形固定資産の取得、法人税等の支払による支出等があったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費の計上等があったため、前連結会計年度末に比べ3億51百万円増加し、当連結会計年度末には10億30百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は32億43百万円(前年同期比30億36百万円収入の減少)となりました。これは主に、売上債権の増加13億45百万円、棚卸資産の増加33億55百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益が86億60百万円、減価償却費21億47百万円等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は25億39百万円(前年同期比93百万円支出の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が23億38百万円であったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は5億53百万円(前年同期比41億57百万円支出の減少)となりました。これは主に、短期借入金の減少額が5億50百万円であったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年増減率(%) |
伸銅 | 111,368 | 6.7 |
精密部品 | 5,781 | 17.2 |
配管・鍍金 | 8,221 | 15.5 |
合計 | 125,371 | 7.7 |
(注)金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数字によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年増減率(%) | 受注残高(百万円) | 前年増減率(%) |
伸銅 | 104,981 | 2.2 | 8,173 | △12.5 |
精密部品 | 6,019 | 10.7 | 894 | 3.2 |
合計 | 111,001 | 2.7 | 9,067 | △11.2 |
(注)配管・鍍金事業は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年増減率(%) |
伸銅 | 106,152 | 5.8 |
精密部品 | 5,991 | 17.4 |
配管・鍍金 | 11,694 | 17.7 |
合計 | 123,838 | 7.4 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
東泉産業株式会社 | 16,511 | 14.3 | 17,683 | 14.3 |
(2)経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
(経営成績に関する分析)
(単位:百万円)
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 |
2023年3月期 | 123,838 | 8,279 | 8,655 | 5,318 |
2022年3月期 | 115,343 | 10,771 | 6,571 | 4,313 |
増減 (増減率%) | 8,494 (7.4) | △2,492 (△23.1) | 2,083 (31.7) | 1,004 (23.3) |
売上高は、伸銅事業の販売数量が前年同期比6.4%減少したものの、銅相場が前年同期と比較して高い水準であったこと等により、1,238億38百万円(前年同期比7.4%増加)となり、営業利益は、原料相場差益が前年同期より減少したこと等により82億79百万円(同23.1%減少)となりました。銅や亜鉛の相場変動によって生じる損益への影響を打ち消すために行っているデリバティブ取引による営業外損益が前年同期より改善したことから、経常利益は86億55百万円(同31.7%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、53億18百万円(同23.3%増加)となりました。
なお、経常利益の主な増減要因は次のとおりであります。
数量・構成 | 10.0億円 |
相場差損益 | △26.4億円 |
電力費 | △7.3億円 |
デリバティブ損益 | 44.9億円 |
その他 | △0.2億円 |
(財政状態に関する分析)
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は545億23百万円となり、前連結会計年度末に比べ52億12百万円増加しました。これは主に、電子記録債権が24億73百万円、棚卸資産が34億27百万円増加したことによるものであります。固定資産は209億31百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億56百万円減少しました。この結果、資産合計は754億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ43億55百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は228億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ18億94百万円減少しました。これは主に未払法人税等が6億1百万円増加したものの、短期借入金が5億50百万円、未払費用が2億55百万円、未払消費税等が2億55百万円、設備関係支払手形が7億11百万円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は263億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億98百万円減少しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は491億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ52億53百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が53億18百万円であったことによるものであります。この結果、自己資本比率は57.5%(前連結会計年度末は54.2%)となりました。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因)
当社グループは、国際相場商品である銅や亜鉛を主要原材料として使用しています。このため、銅や亜鉛の相場が下がり局面にある場合は、保有原材料や工程内仕掛品などの棚卸資産等に含み損が発生するため、棚卸資産評価損の計上を必要としたり、製品販売価格が下落して売上高が減少したりする可能性があります。
(戦略的現状と見通し)
当社グループは、市場が成熟したり縮小したりしている分野では、M&Aなどによる業容の維持拡大と、新製品の開発による市場開拓に努めて参りました。今後とも引き続き、M&Aと製品開発に注力して参ります。
(経営者の問題認識と今後の方針について)
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき、最善の経営方針を立案するよう努めていますが、資源エネルギー価格が高騰し、各種購買品の仕入価格が上昇しています。コストアップ分を適切に製品価格へ転嫁すると同時に、より一層、新製品の開発と新市場の開拓に注力して行く所存です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「業績等の概要」に記載のとおりであります。また、当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度より30億36百万円少ない32億43百万円の資金を獲得しました。これは主に、売上債権の増加13億45百万円、棚卸資産の増加33億55百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益が86億60百万円、減価償却費21億47百万円等があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、主に有形固定資産の取得により、25億39百万円の資金を支出しました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローでは、主に短期借入金の減少により、5億53百万円の資金を支出しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは32億43百万円に対して、投資活動によるキャッシュ・フローは△25億39百万円、財務活動によるキャッシュ・フローは△5億53百万円ですので、営業活動により得た資金で、借入金を返済し、投資活動を行ったことになります。ただ、今後も継続的な設備投資が見込まれます。また、M&Aによる資金が必要になる可能性もあります。原料相場が上昇した場合にはさらに、運転資金を確保する必要があります。これらの影響によって、資金需要が増加する際には、内部留保資金に加え、取引金融機関からの借入により資金調達をすることになりますが、当社グループの自己資本比率は57.5%であり、十分な資金調達余力を保有しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。