3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。

なお、当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しておりますが、事業構成において前会計年度との実質的な変更は無いため、前年同期間との比較は前会計年度の個別財務諸表と比較した前年同期比を参考として記載しております。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(業績等の概要)

(1)事業の進捗の状況

①  当期の経営成績

当社グループは、2020年12月に自社によるトレアキシン®(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物)の販売を開始し、2021年度の最重要課題である収益化を達成しました。

地域のニーズをくみ上げることで地域のニーズに合致したきめ細かい提案を企画し、より高い生産性をもつ営業組織体制を確立するため、全国に医薬情報担当者を、さらには「ヘマトロジー・エキスパート」を地域毎に配置することで、より科学的な情報提供ができる体制を確立しました。また、全国流通体制を確立するため株式会社スズケン及び東邦薬品株式会社との間で両者を総代理店とする医薬品売買に関する取引基本契約を締結、全国流通体制を構築しております。物流につきましては、株式会社エス・ディ・コラボと提携し、東日本地域と西日本地域の2拠点に物流センターを設置しております。

当連結会計年度においては、トレアキシン®点滴静注液100mg/4mL[RTD (Ready-To-Dilute)製剤]の投与時間を10分間に短縮するRI(Rapid Infusion)投与について、2022年2月に一変承認を取得しました。RTD製剤は、従来の凍結乾燥製剤(FD製剤)に比べて手動による煩雑な溶解作業に要する時間を短縮することができ、さらに、RI投与により投与時間が大幅に短縮されるため、患者さん及び医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となります。また、輸液量も少なくなることから塩分量も軽減できます。

RI投与については、2022年12月末時点において80%を超す医療施設で患者さんに投与が行われており、順調にRI投与への切り替えが進んでおります。

以上の結果、営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症による治療の遅延、それに伴う医療施設の訪問規制が継続し、営業活動の制約となったこと等の要因はあるものの、ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法(以下「BR療法」)及びベンダムスチンとリツキシマブ、ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)との併用療法(以下「Pola-BR療法」)の再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下「r/r DLBCL」)の適応追加によるr/r DLBCLの売上が通年に亘って寄与し、売上高は10,008,338千円(前年同期比21.2%増)となりました。

販売費及び一般管理費は、研究開発費として2,554,799千円(前年同期比47.2%増)を計上し、その他の販売費及び一般管理費との合計では5,636,278千円(前年同期比17.8%増)となりました。

これらの結果、営業利益は1,963,625千円(前年同期は1,016,001千円)、経常利益は1,999,878千円(前年同期は1,001,133千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,179,238千円(前年同期は、2021年12月期の業績等を考慮し、繰延税金資産を1,275,759千円計上したこともあり、2,032,203千円)となりました。また、当連結会計年度においてRTD製剤の累計売上高が11,000,000千円に到達したため、イーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州、以下「イーグル社」)への販売マイルストーン支払額550,000千円を売上原価に計上しております。

2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品が製造販売承認されたことに対し、当該製品のライセンス元であるイーグル社の持つ特許に対する侵害及び当社が同製品について有する独占的な特許実施権の侵害の可能性が生じたことについて、ライセンス元であるイーグル社と協議し、後発医薬品の製造販売承認を取得した4社に対して当該特許権の侵害の懸念について文書によって通告し、適切な対応を要求しました。2022年12月には、イーグル社と共同でファイザー株式会社及び東和薬品株式会社に対して特許権侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止及び損害賠償請求訴訟を提起いたしました。

なお、当社グループの事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

②  研究開発活動

当連結会計年度においては、各開発パイプラインにおいて、以下のとおり研究開発を推進しました。

(ⅰ) 抗がん剤SyB L-0501(FD製剤)/ SyB L-1701(RTD製剤)/ SyB L-1702(RI投与)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®

イーグル社から導入したRTD製剤についてRI投与の安全性に関する臨床試験が終了し、2022年2月に一変承認を取得しました。これによってRTD製剤のすべての適応症への投与方法としてRI投与が可能となりました。

また、トレアキシン®に関しては、埼玉医科大学との特定臨床研究や京都大学との共同研究等に積極的に取り組み、新たな可能性を探索してまいります。

 

(ⅱ) 抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)

オンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州)から導入したリゴセルチブ注射剤については、リゴセルチブとトレアキシン®に関して、東京大学との共同研究及び社会連携講座の設置などを通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っております。

 

(ⅲ) 抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)

グローバル展開を見据えキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)から導入した抗ウイルス薬BCVの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「BCV IV」及び「BCV Oral」)の事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。

BCV IVについては、造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス感染症を対象に、日本・アメリカ・ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス感染症を対象とする第Ⅱ相臨床試験を開始するため、FDAに治験許可申請(Investigational New Drug(IND)Application)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、米国食品医薬品局からファストトラック指定を受けており、2021年8月には第1例目(FPD:First Patient Dosing)の投与を開始しました。2022年12月末現在、症例登録数(累計)は、20症例となっています。

腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症は、腎機能低下や移植腎の喪失(グラフトロス)など深刻な経過を辿ることがあり、レシピエント、ドナー、医療者、また社会にとって深刻な結果を招く疾患ですが、2022年5月には独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に、2022年8月にはオーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA:Therapeutic Goods Administration)に、それぞれ腎移植後のBKウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験の治験計画届を提出し、2022年12月にはオーストラリアにおける第1例目の投与(FPD)を開始しました。

EBウイルス(EBV)の関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症について、2022年8月には、米国国立衛生研究所(NIH:National Institute of Health)に所属する国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS:National Institute of Neurological Disorders and Stroke)との間で、共同研究試料提供契約(Collaboration Agreement for The Transfer of Human Materials)を締結しました。

ポリオーマウイルスは、二本鎖DNAウイルスの中でも、その感染によって重篤な疾患を引き起こすことが知られており、既存の抗ウイルス薬ではほとんど効果が見られないため、有効な治療薬の開発が待ち望まれており、2022年11月に米国ペンシルバニア州立大学医学部との間で試料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を締結し、ポリオーマウイルス感染マウスモデルにおけるBCVの効果を検証する非臨床試験を開始しました。

二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)の中には単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)をはじめ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)等、脳神経組織への指向性を有するものがあり、アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、それらの潜伏しているウイルスの再活性化による感染の関与についての研究が、この数年進み知見が増えています。2022年12月に米国タフツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を培養した脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルを用いて、単純ヘルペスウイルス(HSV)が感染に対するBCVの効果を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結し、共同研究を開始しました。

BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、シンガポール国立がんセンター(NCCS: National Cancer Centre Singapore)やカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターとの共同研究等を通じて、EBウイルス陽性リンパ腫、難治性脳腫瘍等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。現在有効な治療方法が確立していない進行の早いNK/T細胞リンパ腫に対するBCVの治療効果に関するNCCSとの共同研究成果については、2022年12月、米国ニューオリンズで開催された第64回米国血液学会年次総会(The 64th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting)において口頭発表に採択され、Dr. Jason Y Chanにより発表されました。2022年9月、キメリックス社はエマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)へのBCVに関する権利の譲渡手続きの完了を発表しましたが、当社の取得したBCVに関する、天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。

 

③  海外事業

シンバイオファーマUSA社長兼チーフオペレーティングオフィサー(COO)のキャロリン・ヤナビッチ博士(Dr. Carolyn Yanavich)を当社のチーフデベロップメントオフィサー(CDO)に選任し、グローバル開発体制の大幅な拡充を行い、シンバイオファーマUSAを国際臨床試験の推進役として、抗ウイルス薬BCVのグローバル開発計画を主導し加速させました。

 

④  新規開発候補品の導入

当社グループは2019年に導入した抗ウイルス薬BCVのグローバル開発を推進するとともに、従来からの取り組みである複数のライセンス案件の検討を進め、新規開発候補品のライセンス権利取得に向けた探索評価の実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として中長期的な事業価値の創造を目指してまいります。

 

⑤  財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は10,433,347千円となりました。流動資産は9,312,706千円となり、主な内訳は、現金及び預金が6,282,554千円、売掛金が2,084,915千円、商品及び製品が293,757千円、半製品が175,170千円であります。固定資産は1,120,641千円となり、主な内訳は、繰延税金資産が744,728千円、ソフトウエアが222,204千円であります。

負債の部については、総額1,927,255千円となりました。流動負債は1,923,870千円となり、主な内訳は、未払金が1,163,721千円であります。固定負債は3,385千円となり、内訳は、退職給付に係る負債3,385千円であります。

純資産の部については、総額8,506,092千円となりました。主な内訳は、資本金が17,548,459千円、資本剰余金が17,523,357千円、新株予約権が411,672千円であります。

この結果、自己資本比率は77.6%となりました。

 

⑥  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、6,282,554千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益2,106,279千円の計上、売上債権62,594千円の減少等により営業活動資金が増加した一方、未払又は未収消費税等270,711千円の増加、棚卸資産82,746千円の増加等により、全体では1,614,241千円の増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

無形固定資産の取得による支出45,524千円等により、全体では47,127千円の減少となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

新株の発行による収入662,000千円等により、全体では627,985千円の増加となりました。

 

⑦ 生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

当社は生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(仕入実績)

当連結会計年度の仕入実績は次のとおりであります。

 

 

当連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

仕入高(千円)

前年同期比(%)

仕入

2,492,155

131.6

合計

2,492,155

131.6

 

(注) 当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(受注実績)

当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(販売実績)

当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

 

 

当連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

商品及び製品販売

10,008,338

121.2

マイルストーン収入

合計

10,008,338

121.2

 

(注) 1.当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである ため、セグメント別の記載を省略しております。

     2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

当連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

株式会社スズケン

6,061,579

60.6

東邦薬品株式会社

3,946,758

39.4

 

 

 

⑧ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは、新規開発品の導入と、その研究開発に対して積極的に資金を投下して参りました。

また、安定的に運転資金を確保することを目的として銀行から融資枠の設定を受けております。

当面の資金需要に関しては、事業から生じるキャッシュ・フロー及び自己資金により賄うことを基本方針としております。

一方、今後の資金需要を想定し、内部資金を充当することに加え、資金調達と共にグローバル製薬会社との業務提携を中長期的に検討いたします。

 

⑨ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。