文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べて1,853,301千円増加し、2,775,523千円となりました。この主な要因は、マザーズへ新規上場に伴う公募増資等により、現金及び預金が1,735,020千円増加したことに加え、売掛金が104,225千円増加したことよるものであります。また、固定資産は、前事業年度末に比べて187,905千円増加し、232,333千円となりました。この主な要因は、繰延税金資産116,360千円及びレンタル資産として顧客に提供する「AI inside Cube」を33,005千円計上したこと等によるものであります。この結果、総資産は、前事業年度末に比べ2,041,207千円増加し、3,007,856千円となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べて332,658千円増加し、694,097千円となりました。この主な要因は、未払法人税等が119,797千円、未払消費税が81,046千円、また業容拡大に伴い未払金及び未払費用が48,247千円増加したこと等によるものであります。固定負債は、長期前受収益が増加したことにより、前事業年度末に比べて7,971千円増加しました。この結果、総負債は、前事業年度末に比べて340,629千円増加し、702,068千円となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べて1,700,577千円増加して2,305,788千円となりました。これは、主に当社普通株式の東京証券取引所マザーズへの上場に伴う新株発行等により、資本金及び資本剰余金が640,800千円ずつ増加したこと、当期純利益419,981千円を計上したことによるものです。
なお、当事業年度末における自己資本比率は76.7%となり、前事業年度末に比べ、14.1ポイント増加しております。
当事業年度(2019年4月1日から2020年3月31日)における我が国の経済は、企業業績や雇用環境の改善が続き、緩やかな回復基調が続いていましたが、米中の貿易摩擦や英国のEU離脱問題に加え、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により世界経済の見通しは極めて不透明となり、今後の事業活動への影響が大いに懸念される状況となっております。また、少子高齢化や人口減による労働人口の減少、新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴うテレワークの推進等を背景に、企業は労働者の働き方の改善を意識した事業運営が求められる基調となっており、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するシステム投資が一層の存在感を強めております。
このような市場環境において、当社は産業界に遍在する労働集約的作業に代わる手段として、ディープラーニングによる手書き文字認識AIを活用した生産性向上のためのAI-OCRサービス「DX Suite」を提供してまいりました。その結果、売上高および各段階利益については以下の実績となりました。
当事業年度の売上高は1,591,454千円(前年同期比257.4%増)となりました。主な要因は、「DX Suite」クラウド版において、10月から提供を開始した新料金プランや直販、代理店、また代理店によるOEM販売を中心に新規ユーザの獲得が進み、「Intelligent OCR」契約数が前事業年度末に比べて185件から1,873件へ増加したこと、「Elastic Sorter」契約数が前事業年度末から比べて102件から418件へと順調に獲得できたことによります。また、「DX Suite」をオンプレミス環境で利用可能とするAIプラットフォーム「AI inside Cube」のトライアル導入及び、本番導入数が堅調に推移していることも売上高の増加に貢献しました。
売上高のうち、リカーリング型モデル(注1)及びセリング型モデル(注2)の内訳は以下のとおりとなりました。
(注1) リカーリング型:顧客が当社のサービスを利用する限り継続的に計上される収益形態を表します。
(注2) セリング型:特定の取引毎に計上される収益形態を表します。
当事業年度の売上原価は、122,187千円(前年同期比45.2%増)となりました。主な要因は、サーバ費用が75,770千円(前年同期比114.3%増)、人件費が26,373千円(前年同期比121.8%増)が発生したこと等によるものです。この結果、売上総利益は1,469,267千円(前年同期比306.9%増)となりました。
当事業年度の販売費及び一般管理費は1,036,969千円(前年同期比91.1%増)となりました。主な要因は、株式公開に伴う管理体制の強化や業容拡大に伴う人件費・採用費の増加、「DX Suite」及び「AI inside Cube」に係る研究開発費等であります。この結果、営業利益は432,298千円(前年同期は営業損失181,488千円)となりました。
当事業年度において、営業外収益は544千円(前年同期比601.2%増)、営業外費用は23,841千円(前年同期比1,485.2%増)を計上しました。主な要因は一時的な上場関連費用22,354千円等を計上したことによるものです。この結果、経常利益は409,000千円(前年同期は経常損失182,914千円)となりました。
当事業年度において特別損益は発生しておらず、法人税、住民税及び事業税を105,379千円(前年同期比10,984.0%増)、法人税等調整額116,360千円を計上した結果、当期純利益は419,981千円(前年同期は当期純損失183,865千円)となりました。
なお、セグメントについては、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、記載しておりません。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,735,020千円増加し、2,534,089千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動により得られた資金は580,459千円(前事業年度は34,172千円の収入)となりました。主な増加要因として、税引前当期純利益409,000千円、契約数が増加したことによる前受収益の増加31,307千円があったことに対して、主な減少要因として売上高の増加に伴う売上債権の増加104,225千円等があったことによるものであります。
当事業年度において投資活動により支出した資金は、103,679千円(前事業年度は12,256千円の支出)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出78,083千円、敷金及び保証金の差入による支出25,669千円であります。
当事業年度において財務活動により得られた資金は、1,258,241千円(前事業年度は575,200千円の収入)となりました。主な要因は、株式発行による収入1,259,245千円であります。
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。
当社で行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短く、受注状況には重要性がないため記載を省略しております。
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、収益計上のモデル別に記載しております。
(注) 1.当事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.第4期事業年度における株式会社エヌ・ティ・ティ・データに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、当社が行なっております会計上の見積りのうち特に重要なものは以下のとおりであります。
a. 繰延税金資産の計上
当社は繰延税金資産の回収可能性について毎期検討を行なっております。当社の繰延税金資産の回収可能額は、将来の課税所得の予測に大きく依存しておりますが、課税所得の予測は将来の事業環境や当社の事業活動の推移、その他の要因により変化いたします。将来、課税所得の予測に影響を与える諸要因に変化があり、当社が繰延税金資産の回収可能性がないと判断した場合には繰延税金資産を取り崩し、損益計算書の法人税等調整額が増加し、当期純利益が減少いたします。
b. 固定資産の減損
当社は固定資産の減損について、主として事業の種類別に資産をグルーピングし、減損の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があった場合、将来キャッシュ・フロー等を見積り、減損の要否を判定いたします。判定の結果、減損が必要と判断された資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減損処理いたします。
財政状態に関する分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりです。
経営成績に関する分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりです。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、当社サービスを拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、また研究開発に係る費用であります。これらの資金については自己資金にて充当する方針です。
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。