当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大を受け、緊急事態宣言が発令され、経済活動が大きく制限される中、企業収益や個人消費等の停滞に加えて、雇用情勢や設備投資も弱含みになる等、極めて厳しい状況となりました。緊急事態宣言が解除された後も、雇用・所得環境の悪化は続いており、国内外ともに個人消費や企業収益の回復も先行き不透明な状態となっております。
総務省「令和元年通信利用動向調査」(2020年5月公表)によると、2019年末時点でスマートフォンを保有する世帯の割合は83.4%(前年比5.3%増)と初めて8割を超えており、電子書籍の市場環境は、スマートフォン・タブレット端末ユーザーの増加を背景に拡大が続いております。インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2020」によると、2019年度の電子出版市場規模は3,750億円と推計され、2018年度の3,122億円から20.1%増加し、2024年度には2019年度の約1.5倍の5,669億円程度に拡大すると予測されています。また、2019年度のマンガアプリ広告収益市場規模は、210億円と推計され、2018年度の167億円から25.7%増加しました。2020年度には2019年度の28.6%増の270億円に拡大すると予測されており、アプリでマンガを楽しむユーザーは、引き続き増加傾向にあります。
一方で、電子書籍のビジネスモデルの多様化や成熟によって電子書籍市場が徐々に飽和していくことも想定されます。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による広告市況の悪化に伴い、マンガアプリにおける広告収益単価が下落しております。
このような市場環境の中で、「マンガBANG!」の主力であるフリーミアムモデル(注)のコーナーにおいて、配信される作品の差別化を図るために、オリジナル作品の創出や出版社との信頼関係を深化させ、先行配信や人気作品の配信数の増加に努めてきました。また、「マンガBANG!」の収益力が好調に推移したため、成長期と捉え積極的かつ効率的な広告宣伝による先行投資を行いました。
以上の結果、当事業年度における売上高は7,524,525千円(前年同期比122.2%増)、営業利益は1,097,993千円(前年同期比163.8%増)、経常利益は1,084,693千円(前年同期比173.6%増)、当期純利益は750,264千円(前年同期比147.6%増)となりました。
なお、当社はマンガアプリ事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
(注) フリーミアムモデル:基本的なサービスはすべて無料で提供し、一部の機能を有料で提供するビジネスモデル
当事業年度末における総資産は3,106,918千円となり、前事業年度末に比べ1,493,662千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が854,147千円、売掛金が553,945千円増加したことによるものであります。
当事業年度末における負債合計は1,305,947千円となり、前事業年度末に比べ657,699千円増加いたしました。これは主に、買掛金が162,266千円、未払金が191,698千円、未払法人税等が256,025千円増加したことによるものであります。
当事業年度末における純資産は1,800,970千円となり、前事業年度末に比べ835,962千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が750,264千円増加したことと、新株予約権が50,568千円増加したことによるものであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ854,147千円増加し、1,693,930千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
当事業年度における営業活動の結果得られた資金は、849,901千円(前事業年度は324,928千円の収入)となりました。主な要因は、売上債権の増加553,945千円により資金が減少した一方で、税引前当期純利益の計上1,084,693千円、仕入債務の増加162,266千円、未払金の増加191,698千円、前受金の増加54,235千円、株式報酬費用の計上48,968千円により資金が増加したことによるものであります。
当事業年度における投資活動の結果使用した資金は、25,969千円(前事業年度は58,918千円の支出)となりました。主な要因は、敷金及び保証金の差入による支出22,033千円であります。
当事業年度における財務活動の結果得られた資金は、30,215千円(前事業年度は334,596千円の収入)となりました。主な要因は、新株予約権の行使による株式の発行による収入34,967千円であります。
当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当社事業はマンガアプリ事業の単一セグメントであり、当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
なお、Apple Inc.及びGoogle Inc.に対する販売実績は、当社が同社等を介して行う課金サービスのユーザーに対する利用料の総額であります。
2.当事業年度のユナイテッド株式会社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」及び以下に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に係る当事業年度の会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
当社は、繰延税金資産について、将来減算一時差異の解消時期をスケジューリングし、繰延税金資産を計上しておりますが、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
主力サービスである「マンガBANG!」において、大規模な広告宣伝活動及びコロナ禍による巣ごもり需要等の影響により、MAU(月間アクティブユーザー)を増加することができました。また、出版社等との関係構築強化に努め、幅広いジャンルの優良作品を提供できた結果、課金ARPU(Average Revenue Per Userの略。1ユーザーあたりの平均課金売上金額)を伸長することができました。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い一部顧客の広告自粛及び広告予算縮小の影響を受けて、広告収益単価が下落しました。
この結果、当事業年度の売上高は、7,524,525千円(前年同期比122.2%増)となりました。
売上高の伸長により版権使用料及びプラットフォーム手数料等が増加しました。
この結果、売上原価は4,730,248千円(前年同期比129.8%増)となりました。
費用対効果を重視し、効果的な広告宣伝を実施した結果、広告宣伝費は1,314,628千円(前年同期比96.3%増)、ストック・オプションの付与による株式報酬費用は40,636千円(前事業年度は計上しておりません。)及び人員の増加に伴う給料手当は81,622千円(前年同期比58.4%増)計上しております。なお、広告宣伝は、継続的に効果検証を実施し効率化を図っています。
この結果、販売費及び一般管理費合計は、1,696,283千円(前年同期比86.1%増)となりました。
営業外収益は、1,557千円となりました。これは主に、受取手数料1,340千円によるものです。
営業外費用は、14,857千円となりました。これは主に、為替差損11,739千円(前年同期比175.5%増)によるものです。
法人税等(法人税等調整額を含む)は、334,428千円(前年同期比258.0%増)となりました。
以上の結果、当事業年度の営業利益は1,097,993千円(前年同期比163.8%増)、経常利益は1,084,693千円(前年同期比173.6%増)、当期純利益は750,264千円(前年同期比147.6%増)となりました。
当社の財政状態につきましては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社は、今後も更なる収益基盤の安定化及び持続的な成長を図るためには、収益源の多様化を実現する必要があると考えており、自社による新規事業の創出及び拡大のみならず、業務提携、M&A等の新たな事業・サービスへの提携・投資を積極的に取り組んでいく方針であります。当社の運転資金需要のうち主なものは、当社サービスを効果的に拡大していくための広告宣伝費及びサービス開発に係る人員の採用費、人件費であります。投資を目的とした資金需要は、主にM&A等によるものであります。これらの資金需要は自己資金により充当することを基本的な方針としておりますが、多額なM&A等の戦略的投資については、必要に応じて金融機関からの借入を実施いたします。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は、外部環境の変化に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保することにより経営成績に重要な影響を与える可能性のあるリスク要因を分散、低減し、適切に対応を行って参ります。
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社の主力サービスであるマンガアプリ「マンガBANG!」の成長と新サービス及び新規事業の創出及び拡大に取り組んで参ります。
経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載されている様々な課題に対処し、ユーザーにより良いサービスを継続的に提供していくことが必要であると認識しております。そのため、経営者は、現在の経営環境並びに入手可能な外部環境の変化に関する情報に基づき、迅速かつ最善な経営戦略の立案、経営課題に対する施策の実施に努めております。