当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度においては、内閣府の月例経済報告によれば、わが国の景気は新型コロナウイルス感染症の影響から概ね緩やかに持ち直しており、先行きについては、世界的な金融引締め・海外景気の下振れ等の影響や国内の物価上昇の影響によるリスクはあるものの、社会経済活動の正常化が進む中で景気の持ち直しの持続が期待されています。
当社グループ(当社及び当社の連結子会社)が主力とする不動産賃貸仲介の業界におきましては、社会経済活動の持ち直しの動きに連動して、地域差はあるものの全体としては需要の回復プロセスが進行しているものと推察されます。また、地域・時期による転居需要水準の変動は依然として存在していますが、飲食業等における営業時間制限の撤廃、外国人観光客・外国人留学生の受け入れ再開等、政府・行政の諸政策の効果により、需要回復が一層進むことが予想されています。
このような事業環境の下で、当社グループは、各地域の転居需要を確実に取り込むことを重視して事業運営を推進してきました。2022年5月には宅地建物取引業法が改正されて重要事項説明書と賃貸借契約書を書面ではなく電磁的方法で交付することができるようになり、契約締結までの時間の短縮、保管の効率化、デジタル完結が可能となりました。不動産DXに積極的に取り組んできた当社グループは、この法改正を顧客の利便性向上と会社内の生産性向上の好機と捉え、電磁的方法に対応するシステムを整備いたしました。併せて、情報システムと情報利活用の高度化に対処するため、外部の情報セキュリティアセスメントを受け必要な対応への取り組みを進めています。また、地域内の転居需要取り込みの効率性の観点から、店舗展開においては新規出店とともに既存店舗の統廃合を進め、グループ直営の賃貸仲介店舗は期末時点で200店(期末日を最終営業日とする店舗は含まない)となりました。
そして、経営戦略における重点ポイントの1つ「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」の一環として持株会社化の検討・準備を進め、2022年10月1日付で持株会社体制への移行を実施いたしました。持株会社体制への移行は、地域における営業力・競争力の強化を目的として、より地域の市場特性に合った施策をよりタイミングよく実行に移しやすい体制にすること、そして地域の実情に合わせた人事施策・運営により人材資源の充実を図ることを企図してのものであります。また、今後、営業地域の拡大・事業領域の拡張のためにM&Aを実施する際には、持株会社体制であることがグループ経営を行いやすくするものと認識しております。
なお、当社グループの中長期的な経営戦略については、2021年12月24日に「新成長戦略~3か年目標値及び2030年3月期に向けた目標~」を公表しております。そこでは新たな成長を実現する戦略として(1)既存事業分野の競争力強化等(不動産テック活用のその先のフェーズへ)、(2)既存事業の店舗数増加による規模の拡大(新規出店・M&A)、(3)事業領域拡大による収益構造の転換(新たな事業ポートフォリオの構築)、(4)グループ経営を前進させるための内部体制の強化、以上の4項目を重要ポイントとして提示しております。
また、企業価値を継続的に高めるために不可欠なESG対応についても、再生可能エネルギーへの切替の進展・店舗照明のLED化の実施などTCFDフレームワークを念頭に置いた環境対応施策に取り組み続けるとともに、子育て支援企業として厚生労働省の「くるみん認定」(2021年認定)の取得、経済産業省の定める「DX認定事業者」の認定取得など、かねてより諸制度の導入や運営強化を進めてきました。2023年2月には、経済産業省主催の「健康経営優良法人2023」(大規模法人部門)に2年連続で認定されました。今後さらに取り組みを充実させるための整理・準備を進行しております。
これらの事業運営を進めてきた結果として、当社グループの連結経営成績は、営業収益14,179百万円(前期比0.2%減、27百万円減)、営業利益394百万円(前期比5.8%減、24百万円減)、経常利益620百万円(前期比0.9%増、5百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益327百万円(前期比12.2%減、45百万円減)となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりです。また、セグメント区分による各事業の内容・連結決算への反映期間は(注1)(注2)に記載しております。
① 不動産関連事業(注1)
不動産関連事業は、営業収益は12,540百万円(前期比2.3%減、291百万円減)、セグメント利益は2,185百万円(前期比8.7%増、174百万円増)となりました。新型コロナウイルス感染症の第7波・8波の下で当社グループ従業員の罹患者が増加して営業活動の稼働率が低下した影響等により、仲介件数はグループ全体で82,208件となり、営業収益の減少をもたらしました。なお、単価の状況においては、転居需要の回復プロセスが進行する中で、仲介手数料だけでなく、仲介1件当たりの特別依頼広告料・周辺商品販売等の収入においても回復の傾向を見せております。また、地域内の転居需要取り込みの効率性の観点から、新規出店5店舗を行う一方で既存店舗の統廃合として11店舗を退店し、グループ直営の賃貸仲介店舗は期末時点で200店(期末日を最終営業日とする店舗は含まない)となりました。費用面において効率化による抑制が進んだ結果、収益性が改善し、セグメント利益の増加がもたらされました。
今後は、回復する市場のなかで転居需要の確実で効率的な取り込みを継続しながら、新成長戦略の下で、成長の加速と事業ポートフォリオの見直しのための新サービスの開発・市場浸透等に注力してまいります。
② 施工関連事業(注2)
施工関連事業は、営業収益は1,638百万円(前期比19.2%増、263百万円増)、セグメント利益は183百万円(前期比110.4%増、96百万円増)となりました。これらの業績は、ハウスコム株式会社内のリフォーム事業と会社分割によりそれを継承したハウスコムコミュニケーションズ株式会社とを合わせた営業収益が1,125百万円(前期比16.0%増、155百万円増)まで回復したこと、及びエスケイビル建材株式会社の営業収益が513百万円(前期比26.8%増、108百万円増)となったことが反映されたものであります。
今後は、市場環境の回復のなかで受注機会の確実な獲得に引き続き注力する予定です。
(注1)「不動産関連事業」は不動産仲介、広告・損害保険・各種サービス等に関する事業であり、同事業はハウスコム株式会社及び100%子会社12社の合計13社により構成されています。また、当連結会計年度の連結業績への反映期間は、以下のとおりです。なお、大阪ハウスコム株式会社は、決算期変更に伴い2023年3月31日までを当連結会計年度に取り込むこととなりました。
ハウスコム株式会社 2022年4月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコムテクノロジーズ株式会社 2022年4月1日より2023年3月31日迄。
大阪ハウスコム株式会社 2022年3月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム東東京株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム西東京株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム東神奈川株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム西神奈川株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム千葉株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム埼玉株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム関東株式会社 2022年11月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム静岡株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
ハウスコム東海株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
琉球ハウスコム株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
(注2)「施工関連事業」はリフォーム、請負建築工事等であり、ハウスコム株式会社内のリフォーム事業及び100%子会社のエスケイビル建材株式会社・ハウスコムコミュニケーションズ株式会社により構成されています。また、当連結会計年度の連結業績への反映期間は、以下のとおりです。
ハウスコム株式会社内のリフォーム事業 2022年4月1日より2023年3月31日迄。
エスケイビル建材株式会社 2022年1月1日より2022年12月31日迄。
ハウスコムコミュニケーションズ株式会社 2022年10月1日より2023年3月31日迄。
当社グループの当連結会計年度における経営成績は、以下の通りです。
(単位:千円) |
| 2022年3月期 | 2023年3月期 | 増減額 | (増減率) |
営業収益 |
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不動産関連事業 | 12,832,064 | 12,540,795 | △291,269 | (△2.3%) |
施工関連事業 | 1,374,709 | 1,638,522 | 263,813 | (19.2%) |
合計 | 14,206,774 | 14,179,318 | △27,456 | (△0.2%) |
営業利益 |
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不動産関連事業 | 2,010,280 | 2,185,101 | 174,820 | (8.7%) |
施工関連事業 | 87,260 | 183,596 | 96,335 | (110.4%) |
調整額 | △1,679,159 | △1,974,374 | △295,214 | ― |
合計 | 418,382 | 394,323 | △24,058 | (△5.8%) |
経常利益 | 614,998 | 620,673 | 5,674 | (0.9%) |
当期純利益 | 372,970 | 327,351 | △45,619 | (△12.2%) |
(参考)ハウスコム株式会社単体における経営成績は、以下のとおりです。
(単位:千円) |
| 2022年3月期 | 2023年3月期 | 増減額 | (増減率) |
営業収益 |
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不動産賃貸仲介収入 | 5,362,451 | 2,801,453 | △2,560,998 | (△47.8%) |
仲介関連サービス収入 | 4,674,708 | 2,621,723 | △2,052,985 | (△43.9%) |
経営指導料 | - | 976,184 | 976,184 | - |
その他の収入 | 1,546,678 | 872,114 | △674,563 | (43.6%) |
合計 | 11,583,838 | 7,271,476 | △4,312,361 | (△37.2%) |
営業費用 | 11,236,628 | 7,235,867 | △4,000,760 | (△35.6%) |
営業利益 | 347,209 | 35,608 | △311,601 | (△89.7%) |
経常利益 | 542,940 | 258,288 | △284,652 | (△52.4%) |
当期純利益 | 328,224 | 154,979 | △173,245 | (△52.8%) |
ハウスコム株式会社単体における当事業年度の業績は、営業収益7,271百万円(前期比37.2%減)、営業利益35百万円(前期比89.7%減)、経常利益258百万円(前期比52.4%減)、当期純利益154百万円(前期比52.8%減)となりました。前期との差異の主たる理由は、2022年10月1日に開始された持株会社体制への移行に伴い、ハウスコム株式会社内に一部の賃貸仲介店舗を残し、賃貸仲介店舗とリフォーム事業営業所を子会社に移管したことに伴うものです。子会社の店舗で行う賃貸仲介によって発生する仲介手数料・付帯収入は原則として子会社の営業収益として計上されるとともに、人件費・家賃・諸経費等の店舗運営費用は子会社の費用として計上される等、グループ内で発生する営業収益・費用の多くが子会社で計上されるようになり、ハウスコム株式会社単体での営業収益・費用の計上は大きく減ることとなりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
該当事項はありません。
② 受注実績
該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(千円) | 前期比(%) |
不動産関連事業 | 12,540,795 | 97.7 |
施工関連事業 | 1,638,522 | 119.2 |
合計 | 14,179,318 | 99.8 |
(注)主な相手先別については、前連結会計年度及び当連結会計年度における相手先別の販売実績の総販売実績に対す
る割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)財政状態
当連結会計年度末における総資産は、11,482百万円(前連結会計年度末は10,178百万円)となり、前連結会計年度末と比べ1,304百万円増加しました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、5,808百万円(前連結会計年度末は5,459百万円)となり、前連結会計年度末と比べ348百万円増加しました。これは現金及び預金が275百万円増加したことが主たる要因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、5,674百万円(前連結会計年度末は4,719百万円)となり、前連結会計年度末と比べ955百万円増加しました。これは営業保証金が955百万円増加したことが主たる要因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、3,597百万円(前連結会計年度末は2,557百万円)となり、前連結会計年度末と比べ1,040百万円増加しました。これは上記営業保証金の預入の資金需要に対応するために1,000百万円の短期借入を行ったことが主たる要因であります。
なお、当該短期借入につきましては、持株会社体制移行前に供託していた営業保証金が1年以内に還付されることが見込まれ、かつ当該還付金で返済を予定しております。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、866百万円(前連結会計年度末は832百万円)となり、前連結会計年度末と比べ34百万円増加しました。これは退職給付に係る負債が25百万円増加したことが主たる要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、7,018百万円(前連結会計年度末は6,789百万円)となり、前連結会計年度末と比べ229百万円増加しました。これは剰余金の配当を107百万円行ったこと、並びに親会社株主に帰属する当期純利益327百万円を計上したことが要因であります。
当社グループの当連結会計年度末における財政状態は、以下のとおりです。
(単位:千円) |
| 2022年3月末 | 2023年3月末 | 増減額 |
流動資産 | 5,459,136 | 5,808,093 | 348,957 |
有形固定資産 | 427,767 | 403,035 | △24,731 |
無形固定資産 | 1,862,778 | 1,810,592 | △52,186 |
投資その他の資産 | 2,428,555 | 3,460,811 | 1,032,256 |
資産合計 | 10,178,237 | 11,482,533 | 1,304,295 |
| 2022年3月末 | 2023年3月末 | 増減額 |
流動負債 | 2,557,087 | 3,597,622 | 1,040,534 |
固定負債 | 832,094 | 866,451 | 34,356 |
純資産 | 6,789,055 | 7,018,459 | 229,403 |
| 2022年3月末 | 2023年3月末 |
自己資本比率 | 66.4% | 60.9% |
当社グループの財政状態は、これまでの事業活動の結果として資金と資本の蓄積が進み、借入金等の有利子負債がなく高い水準の自己資本比率(60.9%)であり、安全性の高い状況にあると認識しています。企業環境と事業戦略により重視すべき基準が変わり得るため単独の指標による評価は行っておりませんが、現時点では、成長投資向け資金・株主還元用原資が確保されているとともに、不確実性に対応することのできる財務内容だと評価しております。
なお、短期借入金1,000百万円については、当該持株会社体制移行前に供託していた営業保証金が1年以内に還付されることが見込まれ、かつ当該還付金で返済を予定しているため、上述の財務内容の安全性に問題はないものと判断しております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、4,820百万円(前連結会計年度末4,545百万円)となり、前連結会計年度末と比べ275百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、670百万円(前連結会計年度に獲得した資金767百万円)となり、前連結会計年度に対して96百万円収入が減少しました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益582百万円、非資金取引である減価償却費325百万円であります。主な減少要因は法人税等の支払額207百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,279百万円(前連結会計年度に使用した資金228百万円)となり、前連結会計年度に対して1,050百万円支出が増加しました。主な増加要因は、営業保証金の預入による支出1,000百万円及び、無形固定資産の取得による支払額209百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、883百万円(前連結会計年度に使用した資金164百万円)となり、前連結会計年度に対して1,047百万円収入が増加しました。主な増加要因は、短期借入による収入1,000百万円であります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、重要な設備計画(資本的支出)を予定しておりません。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
| 2022年3月期 | 2023年3月期 |
自己資本比率(%) | 66.4 | 60.9 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 93.2 | 73.6 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
(注) 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成して
います。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定
を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況1 連
結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。