3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要は、以下の通りであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

〈連結経営成績〉

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

実績

増減率(%)

増減額

売上高

162,602

160,130

営業利益

4,581

707

△84.6

△3,873

経常利益

5,651

591

△89.5

△5,059

親会社株主に帰属する当期純損益

3,974

△507

△4,481

 

当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、「収益認識会計基準」という。)等を適用しており、当連結会計年度の売上高は109億69百万円減少しております。なお、海外飲料事業の現地会計はIFRS適用のため、収益認識会計基準等適用による影響はありません。

また、当連結会計年度より、海外飲料事業の主要拠点であるトルコにおいて3年間の累積インフレ率が100%を超えたことを受け、トルコリラを機能通貨とするトルコの子会社について、超インフレ経済下で営業活動を行っていると判断し、トルコの子会社の財務諸表について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従い、会計上の調整をしております。この調整により、売上高は5億69百万円増加、営業利益は11億44百万円、経常利益は14億23百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は17億84百万円、それぞれ減少しております。

これらの詳細については、連結財務諸表「注記事項(会計方針の変更)及び(追加情報)」をご参照ください。当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。なお、収益認識会計基準等の適用により、大きな影響が生じる売上高については、増減額・増減率を記載しておりません。

 

(ご参考)IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件による会計上の調整額

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

IAS第29号

調整前

IAS第29号

による調整額

IAS第29号

調整後

売上高

162,602

159,561

569

160,130

営業利益

4,581

1,851

△1,144

707

経常利益

5,651

2,015

△1,423

591

親会社株主に帰属する当期純損益

3,974

1,276

△1,784

△507

 

 

〈セグメント別概況〉

(単位:百万円)

 

売上高

(ご参考)

収益認識会計基準等適用前の基準ベース

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

当連結

会計年度

(試算)

増減額

 

増減率

(%)

国内飲料事業

118,080

109,770

118,467

387

0.3

海外飲料事業

12,777

18,909

18,909

6,131

48.0

医薬品関連事業

11,133

12,522

12,696

1,563

14.0

食品事業

21,165

19,565

21,664

498

2.4

希少疾病用医薬品事業

調整額

△553

△636

△636

△83

合計

162,602

160,130

171,100

8,497

5.2

 

(単位:百万円)

 

セグメント利益又は損失(△)

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

国内飲料事業

6,267

2,758

△3,509

海外飲料事業

△528

△1,091

△562

医薬品関連事業

△19

347

367

食品事業

959

765

△193

希少疾病用医薬品事業

△573

△499

73

調整額

△1,524

△1,573

△49

合計

4,581

707

△3,873

 

(単位:%)

 

セグメント利益率

セグメントROA

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減

国内飲料事業

5.3

2.5

△2.8

11.5

4.7

△6.8

海外飲料事業

△4.1

△5.8

△1.6

△5.3

△9.4

△4.1

医薬品関連事業

△0.2

2.8

3.0

△0.1

1.7

1.8

食品事業

4.5

3.9

△0.6

4.8

3.6

△1.1

(注1)報告セグメントごとの売上高は、セグメント間の内部売上高を含んでおります。

(注2)海外飲料事業の現地会計はIFRS適用のため、収益認識会計基準等適用による影響はありません。

(注3)海外飲料事業について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従い、会計上の調整をしております。この調整により、売上高は5億69百万円増加、セグメント利益は11億44百万円減少しております。

 

当連結会計年度のわが国の経済は、このところ一部に弱さが見られるものの、緩やかに持ち直しております。先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待されますが、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなるほか、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響や中国における感染拡大の影響に十分注意する必要がある等、今後の動向は依然として不透明な状況にあります。

このような状況の中、当社グループは5ヵ年の「中期経営計画2026」の初年度として、「国内飲料事業の再成長」「海外事業戦略の再構築」「非飲料領域の強化・育成」の3つの基本方針のもと、「グループミッション2030」の実現に向けたマテリアリティに対応した成長戦略を推進すると共に、サステナビリティ経営の推進による組織基盤の強化に取り組んでまいりました。

当連結会計年度の経営成績は、ロシア・ウクライナ情勢に起因した資源価格・原油価格の高騰や為替相場の急激な変動等、外部環境の変化が事業活動に多大な影響を及ぼす状況の中、海外飲料事業(トルコ飲料事業)や医薬品関連事業の売上高が大きく伸長する等、収益認識会計基準等適用前の基準ベースでは、増収を確保することができました。

国内飲料事業におきましては、顧客志向営業の成果による自販機設置台数の増加傾向維持、スマート・オペレーション体制の全社展開、ダイドードリンコとアサヒ飲料株式会社(以下、アサヒ飲料)との自販機事業に関する包括的業務提携契約の締結等、自販機市場における確固たる優位性確立に向けた取り組みは着実に進捗しております。

また、海外飲料事業におきましては、トルコ国内の急速なインフレや為替変動に対応した業績安定化に注力したほか、医薬品関連事業・食品事業における受注・販売の拡大や、希少疾病用医薬品事業では、医薬品等製造販売業許可の取得等、非飲料領域における取り組みも着実に進めております。

一方、国内飲料事業の主要原材料であるコーヒー豆をはじめとする原材料価格やエネルギーコストの高騰傾向は、企業努力のみでは吸収することが困難な状況となり、損益面に大きな影響を与える結果となりました。

 

なお、連結損益計算書の主要項目ごとの前連結会計年度との主な増減要因等は、次の通りであります。

 

i.売上高

国内飲料事業は、飲料の平均販売単価の改善やサプリメント等の通信販売の伸長により、収益認識会計基準等適用前の基準ベースでは、増収を確保することができました。

また、海外飲料事業においては、継続的な価格改定の実施により、トルコ飲料事業の売上高が大きく伸長したほか、医薬品関連事業ではパウチ製品の受注増、食品事業は在宅需要の増加等もあり、いずれも好調な実績となりました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、1,601億30百万円(収益認識会計基準等適用前の基準で試算した場合、5.2%増)となりました。

 

 

ⅱ.営業利益

当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度と比較して92億76百万円増加し、871億72百万円となりました。その主な要因は、原材料価格やエネルギーコストの高騰等により、各セグメント共に製造原価が大きく上昇したことによるものであります。

国内飲料事業においては、主要原材料であるコーヒー豆の高騰、流通チャネルに係るリベート等の増加、自販機に係る減価償却費の増加等により、損益面は後退する結果となりました。一方、医薬品関連事業におきましては、売上面の伸長により、製造原価上昇の影響を吸収し、増益を確保いたしました。

なお、海外飲料事業につきましては、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従った会計上の調整により、セグメント損失が増加しておりますが、トルコ子会社におきましては、急速なインフレや為替変動に対応すべく、継続的な価格改定やコスト増加の抑制策等の対策を講じたことにより、会計上の調整を加える前の利益水準は、前連結会計年度と比較して大きく改善しております。

以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、7億7百万円(前連結会計年度比84.6%減)となりました。

 

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ⅲ.経常利益

当連結会計年度の営業外収益は、前年度に計上した為替差益がなくなったことにより、前連結会計年度と比較して3億86百万円減少し、12億1百万円となりました。また、営業外費用は、為替差損5億46百万円を計上したことに加え、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従った会計上の調整により、正味貨幣持高に関する損失2億72百万円を計上したこと等から、前連結会計年度と比較して7億99百万円増加し、13億17百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、5億91百万円(前連結会計年度比89.5%減)となりました。

 

ⅳ.親会社株主に帰属する当期純損失

当連結会計年度の特別利益は、大江生醫股份有限公司株式の一部売却による投資有価証券売却益として5億12百万円、国内飲料事業の遊休施設に係る固定資産売却益として2億54百万円を計上したことから、7億66百万円となりました。特別損失は、国内飲料事業の連結子会社における固定資産の減損損失を1億44百万円計上したほか、2022年3月に発生した福島県沖地震に係る災害による損失として、85百万円を計上したこと等から、2億67百万円となりました。また、当連結会計年度の法人税等は、前連結会計年度と比較して2億7百万円減少し、15億80百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は、5億7百万円(前連結会計年度は39億74百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

また、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の254.20円に対し、当連結会計年度は1株当たり当期純損失32.40円となりました。

 

なお、当連結会計年度における収益及び費用の主な為替換算レートは、1トルコリラ=期末時点7.09円(前連結会計年度は期中平均12.44円)、1中国元=期中平均19.52円(前連結会計年度は期中平均17.13円)となっております。

〈財政状態〉

(単位:百万円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減額

 

流動資産

78,546

81,113

2,566

固定資産

80,438

83,091

2,653

資産合計

158,984

164,204

5,220

 

流動負債

38,764

43,275

4,511

固定負債

36,958

36,861

△97

負債合計

75,722

80,137

4,414

純資産合計

83,261

84,067

805

 

 

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して52億20百万円増加し、1,642億4百万円となりました。

当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の52.1%に対し50.9%、流動比率は前連結会計年度末の202.6%に対し187.4%、固定比率は前連結会計年度末の97.1%に対し99.4%となり、財務健全性を引き続き維持しております。

当連結会計年度におきましては、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従い連結財務諸表を修正した結果、トルコ飲料事業に係るのれん及び商標権の当連結会計年度の期首残高21億68百万円全額の減損を認識し、期首利益剰余金の減少として処理しております。なお、連結貸借対照表における非貨幣性項目(棚卸資産、有形・無形固定資産等)については、取得日から当連結会計年度末時点までの物価変動に応じて修正しております。また、為替換算調整勘定の変動により、前連結会計年度と比較して純資産が増加しております。

 

当社グループの連結財政状態の前連結会計年度末と比較した主な増減要因等は、次の通りであります。

 

ⅰ.ネットキャッシュ

当連結会計年度末の金融資産(現金及び預金・有価証券・投資有価証券(関係会社株式を除く)・長期性預金)は、投資有価証券の時価変動等により、前連結会計年度末と比較して46億79百万円減少し、624億40百万円となりました。また、当連結会計年度末の有利子負債(短期/長期借入金、短期/長期リース負債・債務、社債、長期預り保証金)は、前連結会計年度と比較して9億12百万円増加し、363億94百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末のネットキャッシュ(金融資産-有利子負債)は、前連結会計年度末と比較して55億92百万円減少し、260億46百万円となりました。

 

ⅱ.運転資本

当連結会計年度末の売上債権は、前連結会計年度末と比較して11億27百万円増加し、188億18百万円となりました。また、当連結会計年度末の棚卸資産は、前連結会計年度末と比較して28億23百万円増加し、115億87百万円となりました。一方、当連結会計年度末の仕入債務は、前連結会計年度末と比較して36億75百万円増加し、208億23百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、前連結会計年度末と比較して2億76百万円増加し、95億82百万円となりました。

 

ⅲ.有形固定資産・無形固定資産

当連結会計年度末の有形固定資産・無形固定資産は、前連結会計年度末と比較して47億49百万円増加し、571億17百万円となりました。この主な要因は、国内飲料事業における自動販売機の未償却残高の増加及び海外飲料事業におけるIAS第29号の適用に伴う調整によるものであります。

 

 

ⅳ.純資産

当連結会計年度末の株主資本は、前連結会計年度末と比較して38億14百万円減少し、849億67百万円となりました。この主な要因は、海外飲料事業におけるIAS第29号の適用に伴う調整によるものであります。

当連結会計年度末のその他有価証券評価差額金は、政策保有株式の時価変動により、前連結会計年度末と比較して9億52百万円減少し、58億46百万円となりました。また、当連結会計年度末の為替換算調整勘定は、IAS第29号の適用に伴い、前連結会計年度末と比較して54億67百万円増加し、△80億76百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比較して8億5百万円増加し、840億67百万円となりました。

 

 

〈キャッシュ・フローの状況〉

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

8,059

5,125

△2,934

投資活動によるキャッシュ・フロー

△6,464

△5,025

1,439

財務活動によるキャッシュ・フロー

△3,651

△1,120

2,531

現金及び現金同等物に係る換算差額

△557

△16

540

超インフレの調整額

140

140

現金及び現金同等物の増減額

(△は減少)

△2,614

△896

1,717

現金及び現金同等物の期首残高

32,687

30,072

△2,614

連結除外に伴う現金及び現金同等物の減少額

△19

△19

現金及び現金同等物の期末残高

30,072

29,156

△916

 

②生産、受注及び販売の実績

ⅰ.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年1月21日

至 2023年1月20日)

前年同期比(%)

海外飲料事業(百万円)

12,946

142.3

医薬品関連事業(百万円)

12,370

112.5

食品事業(百万円)

19,481

合計(百万円)

44,797

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.当連結会計年度の期首より、収益認識会計基準等を適用しており、生産実績については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。生産実績に大きな影響が生じる項目については、前期比増減率は記載しておりません。

ⅱ.商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年1月21日

至 2023年1月20日)

前年同期比(%)

国内飲料事業(百万円)

49,158

107.2

海外飲料事業(百万円)

1,411

203.0

医薬品関連事業(百万円)

132

107.0

合計(百万円)

50,702

108.6

 

ⅲ.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年1月21日

至 2023年1月20日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

海外飲料事業

4,130

177.7

3

8.8

医薬品関連事業

12,016

114.2

2,751

111.4

合計

16,146

125.7

2,754

109.8

 

ⅳ.販売実績

当連結会計年度の販売実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度は、ロシア・ウクライナ情勢に起因した資源価格・原油価格の高騰や為替相場の急激な変動等の外部環境の変化が事業活動に多大な影響を及ぼす状況となりました。各種原材料価格やエネルギーコストをはじめとする、あらゆるコストの上昇傾向は、今後も続くことが想定されることから、企業努力のみでは吸収することが困難と判断し、国内飲料事業及び食品事業においては、2022年10月より、希望小売価格の改定を実施しております。

特に、国内飲料事業におけるキャッシュ・フロー創出力の回復は、「中期経営計画2026」における重要課題であるとの認識のもと、限界利益率の改善による収益構造の適性化を図るべく、主力販売チャネルである自販機における一部商品の販売価格改定を機動的に実行しております。なお、自販機チャネルにおきましては、価格改定後の販売動向は安定的に推移しております。今後とも、事業全般を通じた生産性向上に努めると共に、DyDoの店舗である自販機を通じて、安全・安心で高品質な「こころとからだにおいしい商品」をお客様にお届けしてまいります。

また、国内飲料事業を担うダイドードリンコは、アサヒ飲料と自販機事業に関する包括的業務提携契約を2022年9月15日に締結し、自販機による直販事業を一体的に運営するダイナミックベンディングネットワーク株式会社(以下、ダイナミックベンディングネットワーク)を2023年1月23日に共同株式移転により設立いたしました。このたびの包括的業務提携を契機として、協業によるスケールメリットを活かしつつ、スマート・オペレーションのノウハウをもって、効率的かつ高品質なオペレーションを追求し、自販機市場における確固たる優位性を確立してまいります。

なお、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「2.事業等のリスク」に記載の通りであります。

当社グループは、2030年のありたい姿を示す「グループミッション2030」の実現への取り組みを通じて、世界中の人々が楽しく健やかに暮らすことのできる持続可能な社会の実現に貢献し、社会価値・環境価値・経済価値の創出による持続的成長と中長期的な企業価値向上をめざしてまいります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次の通りであります。

 

ⅰ.国内飲料事業

当連結会計年度の国内飲料市場の販売数量は、前年を3%程度上回る販売実績となっているものの、依然としてコロナ禍発生前の水準には及ばないものとなっております。原材料価格の高騰や物流費の上昇が業界各社の収益構造に大きな影響を与える環境の中、コンビニエンスストアや量販店等の流通市場においては、数量確保に向けた業界各社の熾烈な販売競争が展開されました。一方、自販機市場においては、本格的な販売回復に至らない中、自販機に対する業界各社の取り組み姿勢は二極化しており、上位寡占化の傾向がより強いものとなっております。

 当社グループは、このような状況の中、国内飲料事業の2030年のありたい姿を「自販機市場において絶え間ない挑戦と共創で新しい価値を提供し、トップランナーとして業界をリードし続けます。」と定め、最新のテクノロジーを活用したスマート・オペレーションのさらなる進化に取り組むと共に、顧客志向営業の徹底により、自販機設置台数の増加傾向の維持を図りました。また、自販機の設置先との協働も含め、DyDoの店舗である自販機を通じて、お客様の求める価値をお届けすべく、カーボンニュートラルに対応した“お客様と共にサステナブルな未来を創る”自販機「LOVE the EARTHベンダー」の展開を2022年8月より開始いたしました。

 商品戦略といたしましては、2022年秋冬の新商品として、人気TVアニメ「東京リベンジャーズ」とコラボした「ダイドーブレンド オリジナル」「ダイドーブレンド 絶品微糖」「ダイドーブレンド 絶品カフェオレ」を2022年8月29日より期間限定で発売し、缶コーヒー市場の活性化を図りました。

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また、当社グループの国内飲料事業を担うダイドードリンコは、アサヒ飲料と自販機事業に関する包括的業務提携契約を2022年9月15日に締結し、自販機による直販事業を一体的に運営するダイナミックベンディングネットワークを2023年1月23日に共同株式移転により設立いたしました。

当連結会計年度の売上高は、飲料の平均販売単価の改善や「ロコモプロ」を中心にサプリメント等の通信販売が伸長したことにより、収益認識会計基準等適用前の基準ベースでは増収を確保したものの、主要原材料であるコーヒー豆の高騰、流通チャネルに係るリベート等の増加、自販機に係る減価償却費の増加等により、利益面は厳しい結果となりました。

以上の結果、当連結会計年度の国内飲料事業の売上高は、1,097億70百万円(収益認識会計基準等適用前の基準で試算した場合、0.3%増)、セグメント利益は、27億58百万円(前連結会計年度比56.0%減)となりました。

 

ⅱ.海外飲料事業

当社グループの海外飲料事業の中で大きなウエイトを占めるトルコ飲料事業は、リラ安・ドル高の進行、トルコ国内のインフレの急加速、輸入原材料価格やエネルギーコストの急騰等、同事業を取り巻く経営環境は激しく変化しておりますが、豊富な若年層人口を背景に高い成長ポテンシャルを有しており、主力ブランドであるミネラルウォーター「Saka(サカ)」は、消費者の健康志向を背景に着実な成長を続けております。また、中国飲料事業につきましては、無糖茶ニーズの高まりを背景に、2021年に中国での現地生産を開始したことにより、収益構造の改善を実現することができました。

当社グループは、海外飲料事業の2030年のありたい姿を「世界中の人々の健康を支えるグローバルブランドを生み出します。」と定め、既存のトルコ・中国事業の基盤を活かしながら、海外事業戦略の再構築を進め、健康・無糖ニーズの高まりに対応したグローバルブランドの育成にチャレンジしてまいります。

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当連結会計年度は、トルコ飲料事業においては、PET容器をはじめとする原材料コストや物流費の急激かつ大幅な上昇に対応すべく、各種SKUの積極的な価格改定を継続的に実施し、利益改善を伴う大幅な増収となりました。

損益面につきましては、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従った会計上の調整が大きく影響する結果となりましたが、コスト増加の抑制策や価格改定効果に加えて、前連結会計年度に発生した英国への輸出に係る一時費用も解消したことから、従来基準ベースで大きく改善を図ることができました。

また、中国飲料事業においては、上海市のロックダウンの影響を一時的に受けましたが、現地生産品である「おいしい麦茶」「おいしい紅茶」の販売好調により、利益面も堅調な実績となっております。

なお、2022年4月14日開催の取締役会において、昨今の状況を鑑み、トルコ飲料事業を運営主体としたロシア国内への販売拠点設立に関する調査・検討を打ち切りとし、当初の方針どおり、DyDo DRINCO RUS,LLC.の清算を進めております。

以上の結果、当連結会計年度の海外飲料事業の売上高は、189億9百万円(前連結会計年度比48.0%増)、セグメント損失は、10億91百万円(前連結会計年度は5億28百万円のセグメント損失)となりました。

なお、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従い、会計上の調整をしたため、売上高は5億69百万円増加、セグメント利益は11億44百万円減少(適用前は52百万円のセグメント利益)しております。

 

ⅲ.医薬品関連事業

医薬品関連事業を担う大同薬品工業では、2030年のありたい姿を「健康・美容分野での製造受託企業No.1になります。」と定め、医薬品・指定医薬部外品をはじめとする数多くの健康・美容等のドリンク剤等の受託製造に特化したビジネスを展開し、お客様ニーズにあった製品の創造と充実した生産体制・品質管理体制を強みとして、医薬品メーカーから化粧品メーカーまでの幅広い顧客基盤を有しております。

近年は、受託製造企業としての圧倒的なポジションを確立すべく、2020年2月の奈良工場におけるパウチ容器入りの指定医薬部外品の製造ができるラインの稼働開始に続き、2020年7月には、群馬県館林市の関東工場が稼働を開始する等、2拠点4工場体制での効率的な生産体制の整備に注力しております。

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当連結会計年度は、パウチ容器入り医薬部外品の受注増に加えて、ドリンク剤の受注も回復傾向となり、売上高は大きく伸長いたしました。利益面につきましては、原材料コスト高騰や、工場の操業に係る光熱費等の増加の影響を受注数量の増加によって吸収することができました。

以上の結果、当連結会計年度の医薬品関連事業の売上高は、125億22百万円(収益認識会計基準等適用前の基準で試算した場合、14.0%増)、セグメント利益は、3億47百万円(前連結会計年度は19百万円のセグメント損失)となりました。

 

ⅳ.食品事業

食品事業を担うたらみは、持続的に成長し続けるために目標とする将来像を「フルーツとゼリーを通して、おいしさと健康を追求し、すべての人を幸せにします。」と定め、今まで磨き上げてきた製品開発力を活用し、フルーツとゼリーの周辺領域で、「たらみらしい、おいしい、楽しい」 商品をあらゆる販売チャネルで購入できる機会を創造し、一人でも多くの人においしさと健康をお届けする為に、「フルーツ加工の総合メーカー」をめざして事業を推進しております。変容する市場環境の中でも、新たな価値を提供し続ける企業をめざし、様々な食感を自在に実現する「おいしいゼリー」を作る技術力とブランド力を大きな強みとして、フルーツゼリー市場においてトップシェアを有し、ドライゼリー市場全体が縮小する中においても成長を続けております。

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当連結会計年度におきましては、期初からコロナ禍による在宅療養需要の高まりや、量販店等における売場面積拡大により、特に上期において売上高が大幅に伸長いたしましたが、想定を超える販売好調により、需要が供給をはるかに上回り、増産に努めたものの、十分な供給量を確保できない状況となったことから、約2か月間にわたり主力6SKUの一時販売休止を実施いたしました。売上高につきましては、通期での増収は確保したものの、利益面につきましては、原材料価格高騰や製造固定費の増加の影響を受ける結果となりました。

以上の結果、当連結会計年度の食品事業の売上高は、195億65百万円(収益認識会計基準等適用前の基準で試算した場合、2.4%増)、セグメント利益は、7億65百万円(前連結会計年度比20.2%減)となりました。

 

ⅴ.希少疾病用医薬品事業

当社グループの新規事業領域拡大への取り組みとして、希少疾病用医薬品事業に参入すべく2019年に設立したダイドーファーマは、プロフェッショナル人材の採用を含め、組織体制を整備し、2021年にはライセンス契約を締結する等、マテリアリティに掲げる「社会的意義の高い医療用医薬品の提供」に向けて、着実な歩みを進めております。

以上の結果、希少疾病用医薬品事業のセグメント損失は、4億99百万円(前連結会計年度は5億73百万円のセグメント損失)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループのキャッシュ・フローの源泉である自販機ビジネスを取り巻く市場環境は、コロナ禍を契機として大きく変化しており、上位寡占化の傾向がより強いものとなっております。このような状況の中、当社グループは、収益性の高い新たな自販機設置先の開拓を進めると共に、最新のテクノロジーを活用したスマート・オペレーション体制の構築に向けた投資を着実に推進することにより、国内飲料事業の再成長によるキャッシュ・フロー創出力の回復を図ってまいります。

 

また、当社グループの資本生産性の改善に向けましては、従業員一人ひとりが資本効率性を意識することが肝要と考えております。そこで、グループミッション2030の最終年度のKPIのひとつとして掲げていた営業利益率の目標をROICに変更するとともに、成長ステージである「中期経営計画2026」と最終ステージである「飛躍ステージ」目標数値をそれぞれ設定いたしました。各セグメントにおいて、それぞれの事業特性に合わせた、利益率改善、資産回転率向上に向けたKPIを設定し、従業員それぞれが資本効率を意識した取り組みを進めることで、当社グループ全体の「稼ぐ力」を高めてまいります。

 

<グループミッション2030の各ステージにおけるROIC目標>

 

 

 

国内飲料事業

(除く通販チャネル)

海外事業※1

非飲料事業※2

基盤強化・投資ステージ(実績)

(2020年1月期~2022年1月期)

16.3%

△6.7%

2.7%

成長ステージ

(2023年1月期~2027年1月期)

13%

3%

8%

飛躍ステージ

(2028年1月期~2030年1月期)

17%

5%

17%

※1 現行セグメントにおいては、海外飲料事業

※2 現行セグメントにおいては、国内飲料事業のうち通販チャネル、医薬品関連事業、食品事業、希少疾病用医薬品事業

 

なお、各セグメントにおける取り組みの詳細については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

また、自販機市場での確固たる優位性の確立に向けた取り組みが重要であるとの認識のもと、既存事業から創出されるキャッシュ・フローは自販機関連資産への再投資に振り向けてまいります。

新たな事業領域への投資については、営業キャッシュ・フローの2年分を戦略投資枠として設定し、当社グループの経営成績及び財政状態等への影響に十分注意を払いながら、定性的・定量的な投資基準をもとに、将来の成長に向けて投資すべき案件について適切な投資判断を実行してまいります。

 

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当社グループは、中長期的な持続的成長の実現を可能とすべく、安定収益の確保及びさらなる企業価値の向上に向けて、安定的且つ健全な財務運営を行うことを基本方針としております。グループの資金は持株会社に集中させ、適切な資金配分を行うことにより、財務健全性の維持と安定経営に努めてまいります。

将来の成長に向けた戦略的事業投資の実行の他、突発的なリスク等をカバーし得る十分な自己資本の積み上げを図りつつ、株主の皆様に対しては中長期的に適正な利益還元をめざす等、バランスのとれた健全な財務基盤の維持・構築に努めることとしております。

当社グループは、安定的且つ健全な財務運営を行うという「財務運営の基本方針」に則し、資金調達の多様化・機動性・柔軟性の確保、及び効率化実現に向け、安定した高格付けの維持・向上を経営上の重要課題として位置付けており、長期社債に関する格付を取得しております。

なお、当連結会計年度末時点の格付の状況は以下の通りであります。

 

格付機関

長期発行体格付

見通し

日本格付研究所(JCR)

A-

安定的

 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

また、当社グループは、連結財務諸表の作成上、固定資産の減損会計、各種引当金の見積り計算、繰延税金資産の回収可能性の判断等に対し、現在入手可能な前提に基づく合理的な見積りを反映させておりますが、将来、これらの見積りと大きな差が生じる可能性があります。

なお、当社グループにおける会計上の見積りにおいて使用する事業計画は、新型コロナウイルス感染症による影響については緩やかに回復に向かうことを前提として作成しております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 2[財務諸表等](1)[財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。