3【経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで、以下「当期」)における国内の清涼飲料市場は、COVID-19による行動制限の緩和に伴う人出の回復や経済活動の活性化、記録的な猛暑の影響により需要が増加したものの、清涼飲料各社の価格改定実施による需要へのマイナス影響もあり、数量ベースで前期比4%程度の増加となったものとみられます。また、原材料・資材・エネルギー価格の高騰や円安などが消費行動やビジネスに大きな影響を及ぼすなど、不透明かつ厳しい事業環境が続きました。

このような中、当社は2022年を「持続可能な成長のための基盤づくりの年」と位置づけ、着実かつ持続的な成長に向けた基盤の構築とさらなる変革の推進に取り組んでまいりました。営業分野では、新製品の展開や多様化する消費者ニーズへの対応、人出回復の機会を捉えた効果的なキャンペーンの実施などにより、販売数量および売上収益の成長を図ってまいりました。また、足元のコスト圧力への対応および将来の収益基盤の強化に向け、厳しい競争環境が継続する中ではあったものの、業界に先駆け製品の価格改定を実施いたしました。価格改定については、カスタマーとの丁寧な交渉に努めるとともに、自動販売機を中心に早期の価格反映に取り組んでまいりました。製造・物流分野では、原材料・資材・エネルギー価格の高騰の影響を受ける中、S&OP(Sales and Operations Planning)プロセスの刷新や、国内最大級の保管・出荷能力を備える自動物流センター「埼玉メガDC(Distribution Center)」「明石メガDC」の活用など、急激な需要の増減に柔軟に対応できる供給体制の構築を進めてまいりました。最需要期である夏場には人出回復と猛暑が重なり需要が急増する局面があったものの、これらの取り組みにより、安定的に製品供給を行ってまいりました。また、製造設備の効率的な活用や物流ネットワークの見直しによるコスト削減にも取り組んでまいりました。

社会との共創価値に基づくESG目標の実現に向けた活動にも注力してまいりました。廃棄物ゼロ社会を目指す「容器の2030年ビジョン」達成に向けた取り組みとしては、100%リサイクルPETボトルの採用拡大など、製品パッケージの設計面での取り組みを推進するとともに、自治体やパートナー企業との協働により良質な容器を着実に回収するためのリサイクルスキームの構築などに取り組んでまいりました。また、さらなる資源の循環利用に向け、アルミ缶の水平リサイクル「CAN to CAN」の仕組みを構築し、リサイクル素材を使用した製品の製造・販売を開始いたしました。温室効果ガス(GHG)排出量の削減に向けては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、情報開示の充実を図るとともに活動を推進してまいりました。そのほか、ビジネスを通じた地域社会貢献としては、水源保全活動の実施やフードバンクへの製品寄贈、地域の活動を支援する自動販売機の展開などを、多様性の尊重の一環としては、社内外の啓発の機会を通じたLGBTQの理解促進や働きやすい環境整備を目指した取り組みなどを推進してまいりました。これらを含む当社のESGの取り組みは高く評価されており、当社は世界のESG投資の代表的指標「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に5年連続で選定されました。

当期の業績の詳細は次のとおりです。

 

 

業績の概要

(単位:百万円、販売数量を除く)

 

 

2021年

連結会計年度

2022年

連結会計年度

増減率

売上収益

785,837

807,430

2.7%

飲料事業販売数量(百万ケース)

467

480

3%

売上総利益

350,505

351,755

0.4%

販売費及び一般管理費

363,750

365,295

0.4%

その他の収益(経常的に発生した収益)

887

974

9.8%

その他の費用(経常的に発生した費用)

2,142

1,924

△10.2%

持分法による投資利益(△は損失)

△162

46

事業損失(△)

△14,662

△14,443

その他の収益(非経常的に発生した収益)

9,251

8,338

△9.9%

その他の費用(非経常的に発生した費用)

15,560

5,408

△65.2%

営業損失(△)

△20,971

△11,513

親会社の所有者に帰属する当期損失(△)

△2,503

△8,070

 

 

(参考)第4四半期(10-12月)

 

 

2021年

2022年

増減率

売上収益

196,306

195,109

△0.6%

飲料事業販売数量(百万ケース)

116

113

△3%

売上総利益

89,682

84,439

△5.8%

販売費及び一般管理費

89,882

86,973

△3.2%

その他の収益(経常的に発生した収益)

237

280

18.2%

その他の費用(経常的に発生した費用)

635

982

54.7%

持分法による投資損失(△)

△41

△11

事業損失(△)

△639

△3,247

その他の収益(非経常的に発生した収益)

3,667

900

△75.4

その他の費用(非経常的に発生した費用)

4,021

2,114

△47.4

営業損失(△)

△993

△4,460

親会社の所有者に帰属する四半期損失(△)

△968

△2,876

 

*事業損失(△)は、事業の経常的な業績をはかるための指標であり、売上収益から売上原価ならびに販売費及び一般管理費を控除するとともに、その他の収益およびその他の費用のうち経常的に発生する損益を加減算したものです。

*2021年の親会社の所有者に帰属する当期(四半期)損失(△)については非継続事業も含めて表示しております。

*販売数量について、一部製品の集計範囲および区分等の変更に伴い、2021年の実績値を遡って修正しております。

 

 

連結売上収益は、807,430百万円(前期比21,594百万円2.7%増)となりました。価格改定による販売数量へのマイナス影響があったものの、人出回復や猛暑による需要増加の機会を捉えるべく、新製品の展開や多様化する消費者ニーズに応じたチャネルごとの取り組みを実施したことにより、販売数量は前期比3%の増加となりました。また、収益性の高いベンディングチャネルの数量成長や価格改定の実施によるケース当たり納価の改善が、売上収益の増加に貢献いたしました。なお、当第4四半期(2022年10月1日から2022年12月31日まで)には、10月に実施した小型パッケージの価格改定により、ケース当たり納価は全チャネルで成長いたしました。

 

 

連結事業利益は、14,443百万円の損失(前期は14,662百万円の損失)となり、前期比増加(損失が減少)いたしました。数量成長や価格改定によるケース当たり納価改善の効果に加え、製造・物流効率の向上や変革の推進などによるコスト減少など、コントロール可能な分野においては約200億円の利益改善を実現したものの、原材料・資材・エネルギー価格高騰や円安などの外部要因によるコスト増加が大きく響く結果となりました。

連結営業利益は、11,513百万円の損失(前期は20,971百万円の損失となりました。事業利益が前期比増加(損失が減少)したことに加え、有形固定資産売却益の増加や一時帰休に伴う休業手当費用(以下、一時帰休費用)の減少による貢献があり、営業利益は前期比増加(損失が減少)いたしました。なお、当期のその他の収益(非経常的に発生した収益)には、有形固定資産売却益4,561百万円、雇用調整助成金3,329百万円等が含まれております。また、その他の費用(非経常的に発生した費用)には、一時帰休費用2,168百万円、抜本的な変革の実行に係る事業構造改善費用1,298百万円、希望退職プログラム実施に伴う特別退職加算金等1,104百万円、有形固定資産および無形資産の除売却損812百万円等が含まれております。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、8,070百万円の損失前期は2,503百万円の損失)となりました。営業利益が前期比増加(損失が減少)した一方で、前期に子会社であったキューサイ株式会社の株式譲渡による売却益を非継続事業において計上していたことによる反動などから、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比減少(損失が増加)いたしました。

 

販売数量動向(増減率は前期比)

 通期の販売数量は、価格改定後のマイナス影響があったものの、人出回復や猛暑による需要増が貢献し、3%増となりました。チャネル別では、スーパーマーケット、ドラッグストア・量販店は、人出回復の機会を捉えたキャンペーンの実施や新製品の積極的な展開に努めたものの、価格改定による数量減少や厳しい競争環境の影響を受けました。スーパーマーケットの販売数量は5%減となりましたが、ドラッグストア・量販店では、価格改定による大型PETの数量減少影響が早期に緩和したこともあり、数量は1%増となりました。ベンディングでは、10月以降に小型パッケージの価格改定による数量影響を受けたものの、これまで構築してきたシェア基盤やスマホアプリ「Coke ON」を通じたキャンペーン実施等が人出回復や猛暑により増加する需要の取り込みに貢献し、販売数量は3%増となりました。また、重点施策のひとつである自動販売機の設置活動が年間を通して計画以上のペースで進捗したことにより、自動販売機の稼働台数は前期末比で1万台以上増加し、数量および金額シェアの成長に貢献いたしました。CVSでは、基幹製品や新製品の売場獲得に向けた活動強化や、カスタマーと連携したキャンペーンの実施などに取り組んだものの、厳しい競争環境の継続や価格改定による数量減少等の影響により、数量は1%減となりました。リテール・フードでは、飲食店等において人出が回復したことなどにより、数量は18%増となりました。オンラインは、高い利便性を活かした家庭内消費需要の獲得により人出回復の局面においても全カテゴリーで成長いたしました。ラベルレス製品の展開を含む品揃えの強化や大手オンラインカスタマーとのタイアッププロモーションの実施、定期便ユーザーの獲得等が貢献し、数量は23%増となりました。

清涼飲料の製品カテゴリー別では、炭酸は、価格改定による数量減少の影響があったものの、人出回復によりベンディングや飲食店等で「コカ・コーラ」を中心に数量が増加したことや、「ファンタ プレミアレモン」等の新製品の貢献により、数量は1%増となりました。茶系は、人出回復や猛暑による好影響に加え、前期の発売以降順調に売上を伸ばしている「やかんの麦茶 from 一(はじめ)」や、新製品「綾鷹カフェ ほうじ茶ラテ」の貢献があったものの、価格改定による数量減少が響き、数量は1%減となりました。コーヒーは、新製品「ジョージア ブラック」の発売や「コスタコーヒー」のラインナップ拡充、即時消費チャネルでのボトル缶の成長等により、数量は2%増となりました。スポーツは、猛暑影響や各種イベントの再開等により、全チャネルにおいて成長し、数量は7%増となりました。水は、人出回復や猛暑影響による貢献に加え、13年ぶりにボトルリニューアルを実施した新容器「い・ろ・は・す 天然水」の発売や、家庭内消費需要の取り込みによる大型PETの増加により、数量は8%増となりました。

アルコールカテゴリーは、「檸檬堂」のリニューアルにあわせた製品ラインナップの拡充に加え、ノンアルコール飲料「よわない檸檬堂」の発売や、新たな需要の獲得に向けたレモンサワーの素「檸檬堂 うちわりレモン」の発売による貢献があったものの、前期の新製品の反動やコロナ禍で増加した家飲み需要の一巡もあり、数量は15%減となりました。

 

 

 

(2)キャッシュ・フロー

当期における各キャッシュ・フローの状況等につきましては、次のとおりであります。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

営業活動によるキャッシュ・フローは、42,717百万円の収入(前期は35,982百万円の収入)となりました。これは、税引前損失が12,491百万円となり、また、「減価償却費及び償却費」および「その他の負債の増加」などがあったことによるものです。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動によるキャッシュ・フローは、23,090百万円の支出(前期は15,271百万円の収入となりました。これは、バランスシート健全化に向けた取り組みのなかで、「有形固定資産、無形資産の売却による収入」があった一方で、成長基盤となる戦略投資を含む「有形固定資産、無形資産の取得による支出」があったことによるものです。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動によるキャッシュ・フローは、46,050百万円の支出(前期は67,134百万円の支出)となりました。これは「社債の償還による支出」および「配当金の支払額」等によるものです。

以上の結果、当期末における現金及び現金同等物は前期比26,422百万円減少し、84,074百万円となりました。

 

 

生産、受注および販売の状況

(1)生産実績

当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

飲料事業

526,554

104.2

 

(注)金額は、主として製造原価によっております。

 

(2)商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

飲料事業

62,785

104.4

 

(注)金額は仕入価格によっております。

 

(3)受注状況

当社グループは見込み生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。

 

(4)販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

飲料事業

807,430

102.7

 

(注)主要な相手先別の販売実績については、総販売実績に対する割合が10%を超える相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析

(1)重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、引当金の計上など一部に将来見積りに基づいているものがありますが、これらの見積りは、当社グループにおける過去の実績や将来計画を考慮し合理的と考えられる事項に基づき判断しております。なお、会計基準につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定」に記載のとおりであります。

 

(2)当連結会計年度末の財政状態の分析

当社グループの当連結会計年度末(以下、「当期末」)の親会社所有者帰属持分比率は57.6%であり、財務体質については引き続き健全性を確保しているものと考えております。

連結財政状態計算書の主要項目ごとの前連結会計年度末(以下、「前期末」)との主な増減要因等は、次のとおりであります。

(資産)

当期末の総資産は826,737百万円となり、前期末比40,375百万円減少しました。これは主に、社債の償還等による「現金及び現金同等物」の減少や、明石メガDCを新設した一方で営業拠点の統廃合などによりバランスシートの改善を図った結果「有形固定資産」が減少したことによるものです。

(負債)

当期末の負債は350,378百万円となり、前期末比24,282百万円減少しました。これは主に、社債の償還により流動負債の「社債及び借入金」が減少したことによるものです。

(資本)

当期末の資本合計は476,358百万円となり、前期末比16,093百万円減少しました。これは主に、配当金支払い等による「利益剰余金」の減少等によるものです。 

 

また、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ26,422百万円減少し、84,074百万円(同比23.9%減)となりました。キャッシュ・フローの状況につきましては、「業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。

 

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

当期における経営成績の概況につきましては、「業績等の概要 (1) 業績」に記載のとおりであり、連結損益計算書の主要項目ごとの前期との主な増減は、次のとおりであります。

なお、当期損失および親会社の所有者に帰属する当期損失については非継続事業も含めて記載しております。

(売上収益)

当期における売上収益は、前期に比べ21,594百万円増加し、807,430百万円(前期比2.7%増)となりました。

(営業損失)

当期における営業損益は、前期に比べ9,458百万円増加(損失が減少)し、11,513百万円の損失(前期は営業損失20,971百万円)となりました。

(当期損失)

当期における当期損益は、前期に比べ5,535百万円減少(損失が増加)し、8,059百万円の損失(前期は当期損失2,525百万円)となりました。

(親会社の所有者に帰属する当期損失)

当期における親会社の所有者に帰属する当期損益は、前期に比べ5,567百万円減少(損失が増加)し、8,070百万円の損失(前期は親会社の所有者に帰属する当期損失2,503百万円)となりました。

 

(4)財政状態および経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの財政状態および経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。