(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症への警戒が続くなかで、感染防止と経済活動の両立を目指し、まん延防止等重点措置等の行動制限もなかったことに加え、各種政策等の効果もあり、個人消費など緩やかに持ち直しの動きが続きました。しかしながら、世界的な金融引締め等が続くなか、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなるほか、物価上昇や供給面での制約、金融資本市場の変動など、景気の先行きは予断を許さない状況となっております。
当業界におきましては、外食需要に回復の動きが見られるものの、ウクライナ情勢等による不透明感に加え、急激な円安進行も加わり原材料やエネルギーなどの製造コストが上昇するなかで、食料品や日用品をはじめとする生活必需品の相次ぐ値上げなどは家計に大きな影響を与え、消費者の節約志向が一層高まるなど、厳しい環境が続いております。食肉相場におきましては、国産牛肉は、物価高の影響などにより需要が減少したことなどから、前年を下回って推移しております。米国産牛肉・豚肉の現地相場は総じて前年を下回って推移しておりますが、為替相場の影響で輸入価格は高値で推移しております。また、国産豚肉は、輸入豚肉の価格上昇などの影響から需要が高まり前年を上回って推移しております。
このような状況のなか、当社グループは、お客様に、より安全でより安心して召し上がっていただける食品を提供する総合食品メーカーとして、真に社会的存在価値が認められる企業を目指し、企業活動を推進してまいりました。
また、価格改定による利益改善や合理化によるコスト削減に努めてまいりましたが、価格改定による消費者の節約志向の高まりもあり、当連結会計年度における加工食品事業の売上高は減収、価格改定を上回る原材料やエネルギーコストの上昇などから、セグメント利益の確保は厳しい状況となりました。このような経営環境のもと、当社グループの価値最大化を目的として、収益構造の改革を実施してまいります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
A 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ26億42百万円減少し、1,262億61百万円となりました。負債は、前連結会計年度末に比べ38億31百万円増加し、572億46百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末に比べ64億74百万円減少し、690億14百万円となりました。
B 経営成績
当連結会計年度における売上高は前年同期比1.5%増の2,219億79百万円、営業損失は14億円(前年同期は営業損失8億65百万円)、経常損失は8億97百万円(前年同期は経常損失3億80百万円)となりました。構造改革費用26億21百万円の特別損失計上に加え、繰延税金資産取崩しにより法人税等調整額を11億59百万円計上したことで、親会社株主に帰属する当期純損失は49億87百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失3億76百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(加工食品事業)
ハム・ソーセージ部門では、「燻製屋熟成あらびきポークウインナー」は、SNSを活用したメニュー提案やキャンペーンなどの販促活動を実施し売上拡大を図りました。また、消費者の細分化されたニーズに応えるため、「糖質カット 特級あらびきウインナー」など特長が異なる3種類のウインナー「特級あらびき」シリーズの展開や、グローバル人気キャラクターブランド「BT21」を起用したフィッシュソーセージ・ウインナーなどの新商品を投入しました。中元・歳暮ギフトは、国産豚肉を使用した「藻塩MEISTER糖質ゼロ」を投入するなど拡販に努めました。価格改定により消費者の節約志向が高まり、販売数量が減少したことなどから、当部門の売上高は前年同期比3.1%の減収となりました。
調理加工食品部門では、「スンドゥブ」シリーズは、キャンペーンなどの販促活動に加え、SNSの活用による認知度向上などを図りました。「ビストロ倶楽部濃厚カレー」は、売場獲得に努めた結果、売上高を伸ばし、「サラダチキン」シリーズは、新商品の投入などから売上高は前年を上回りました。また、「おうちde旅する」シリーズから、「ビリヤニの素」「ガパオの素」などの新商品を投入したことに加え、コンビニエンスストア向け米飯商品や、ホイップ済みクリームの売上高が堅調に推移したことなどから、当部門の売上高は前年同期比1.4%の増収となりました。
以上の結果、加工食品事業の売上高は前年同期比0.6%減の1,470億93百万円となりました。合理化によるコスト削減に努めましたが、ハム・ソーセージ部門の減収や価格改定を上回る原材料・エネルギーコストの上昇などから、16億53百万円のセグメント損失(前年同期は10億76百万円の損失)となりました。
(食肉事業)
牛肉につきましては、消費者の節約志向の高まりなどから量販店向け販売が低調に推移しましたが、外食産業向け販売に回復がみられたことなどから、牛肉全体の売上高は前年を上回りました。豚肉につきましては、外食産業への販売強化に努めたことや量販店向け販売単価が上昇したことなどから、国産、輸入ともに、売上高は前年を上回りました。
以上の結果、食肉事業の売上高は前年同期比6.1%増の747億58百万円となりました。セグメント利益は、前年同期比17.7%増の2億3百万円となりました。
(その他事業)
その他事業の売上高は前年同期比11.1%減の1億27百万円、セグメント利益は前年同期比29.3%増の49百万円となりました。
(新型コロナウイルス感染症の影響)
当連結会計年度につきましては、新型コロナウイルス感染症への警戒が続くなかで、感染防止と経済活動の両立を目指し、まん延防止等重点措置等の行動制限もなかったことから、外食需要に回復の動きが見られました。
操業面では、内食・中食需要向け商品の生産を強化、臨時休校に対する従業員の特別有給休暇や、施設・備品等のアルコール消毒を行うなど感染対策を徹底するとともに、従業員の体調に配慮し、円滑な工場運営に努めてまいりました。
(単位:百万円)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券や固定資産の売却による収入がありましたが、生産設備の増強・合理化や品質向上のための固定資産の取得による支出などから、45億16百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得による支出がありましたが、有利子負債の増加などから、5億34百万円増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末から10億74百万円減少し、69億16百万円となりました。
A 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 食肉事業については算出方法を変更したことに伴い、前年同期比は前連結会計年度の実績を組み替えて算出しております。
当社グループは、主として消費動向の予測に基づく見込み生産によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
A 経営成績
(売上高)
売上高は、食料品や生活必需品の相次ぐ値上げなどにより、消費者の節約志向が一層強まるなかで、特にハム・ソーセージ部門が低調に推移しましたが、外食需要に回復の動きが見られたことなどから、前年同期比1.5%増の2,219億79百万円となりました。各セグメント別の売上高は、加工食品事業が前年同期比0.6%減の1,470億93百万円、食肉事業が同6.1%増の747億58百万円、その他事業が同11.1%減の1億27百万円となりました。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は、原材料価格やエネルギーコストの上昇などから、前年同期比2.6%増の1,914億95百万円、売上原価率は、前年同期比0.9%上昇の86.3%となりました。
売上総利益は、前年同期比4.6%減の304億83百万円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、合理化等コスト削減に努めたことなどから、前年同期比2.9%減の318億84百万円となりました。
営業利益は、ハム・ソーセージ部門の売上高が低調に推移したことや、価格改定を上回る原材料価格やエネルギーコストの上昇などから、14億円の営業損失となりました(前年同期は営業損失8億65百万円)。
各セグメント別の損益は、加工食品事業が前年同期を下回り16億53百万円のセグメント損失(前年同期は10億76百万円の損失)、食肉事業が前年同期比17.7%増の2億3百万円のセグメント利益、その他事業が同29.3%増の49百万円のセグメント利益となりました。なお、各セグメント別の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 B 経営成績」に記載のとおりであります。
(経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
経常利益は、営業損失の拡大などから、8億97百万円の経常損失となりました(前年同期は経常損失3億80百万円)。
親会社株主に帰属する当期純利益は、構造改革費用26億21百万円の特別損失計上に加え、繰延税金資産取崩しにより法人税等調整額を11億59百万円計上したことで、49億87百万円の親会社株主に帰属する当期純損失となりました(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失3億76百万円)。
(単位:百万円)
(中期経営計画の進捗状況)
当社グループは、経営環境の変化に柔軟に対応するため、原則として毎年改定を行うローリング方式の中期経営計画として三ヵ年数値計画を発表しております。計画数値をあらためて検証の上、見直しを行い、新たに2023年4月を起点とした中期三ヵ年経営計画(2023年4月1日~2026年3月31日)を策定いたしました。
なお、中期三ヵ年経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
B 財政状態
(単位:百万円)
当連結会計年度末における総資産は、原材料及び貯蔵品が11億69百万円、商品及び製品が11億42百万円増加しましたが、有形固定資産が27億66百万円、現金及び預金が10億74百万円減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ26億42百万円減少し、1,262億61百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金が1億59百万円減少しましたが、有利子負債が21億18百万円、繰延税金負債が9億68百万円、未払金が4億98百万円増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ38億31百万円増加し、572億46百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失49億87百万円の計上、剰余金7億55百万円の配当、自己株式2億76百万円の取得などから、前連結会計年度末に比べ64億74百万円減少し、690億14百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は54.1%となり、前連結会計年度末から4.0%低下しておりますが、ほぼ同水準を維持しており、当社グループの財務体質は一定の健全性を保っていると判断しております。
また、セグメントごとの資産は、加工食品事業が836億15百万円(前年同期は853億53百万円)、食肉事業が206億33百万円(前年同期は198億17百万円)、その他及び全社資産が220億11百万円(前年同期は237億33百万円)であります。加工食品事業における主な資産の減少要因は、有形固定資産の減少によるものであります。
C キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※ 2022年3月期の期首より会計方針の変更をしております。2021年3月期の数値につきましては、当該会計方針の変更を反映した遡及適用後の数値を記載しております。
当社グループは事業活動のための適切な資金を確保し、資金の流動性を維持するとともに、健全な財政状態を目指すための安定的な営業キャッシュ・フローの創出が資本財源の最優先事項の一つであると考えております。
また、株主価値をさらに高めていくためにも、強固な財務体質を維持しながら、継続的な成長経営を基盤とする資金調達が出来る環境を作っておきたいと考えております。
当連結会計年度は、前連結会計年度に引き続き設備投資が減価償却を下回りましたが、2019年3月期~2020年3月期においては、減価償却を上回る設備投資を継続して行ってまいりました。そのなかで自己資本比率やキャッシュ・フロー対有利子負債比率、インタレスト・カバレッジ・レシオなど当社グループは一定の財務健全性を有し、成長戦略に向けての資金調達が可能な財務基盤を維持していると判断しております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、営業活動によるキャッシュ・フローは29億6百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローは45億16百万円減少した結果、フリー・キャッシュ・フローは16億9百万円減少しました。有利子負債は15億70百万円増加し、配当金を7億55百万円支払い、自己株式を2億76百万円取得、現金及び現金同等物は10億74百万円減少しました。
配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりでありますが、当社グループは、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題の1つとして位置付けており、連結業績や財務状況等を総合的に勘案しつつ、安定配当を継続するという基本方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、1株当たり普通配当20円とすることを決定いたしました。
当社グループは、中期経営計画を策定する上での参考や政策保有株式保有の合理性検証のため、資本コストを試算しております。しかしながら、資本コストは計算の基礎となる数値の採用において多様な考え方がありますので具体的な数値については公表しておりません。資本コストは投資家が期待するリターンでありますので、機関投資家等との対話を通じて適切な資本コストの認識に努め、事業計画や株主還元に活かしてまいりたいと考えております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料費、労務費、経費や販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要の主なものは、生産設備の増強・合理化や品質向上のための設備投資によるものであります。これらの必要資金は、主に営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金により調達しております。なお、当連結会計年度において増資や社債発行等の重要な資金調達は実施しておりません。2024年3月期の設備投資予定総額(資産ベース)は、40億50百万円であり、これらの大半は自己資金及びリースによる調達を予定しております。
また、当社グループは効率的な資金調達を行うため取引銀行と当座貸越契約を締結しており、その契約に基づく当連結会計年度末の借入未実行残高は229億92百万円であります。当連結会計年度末の現金及び預金69億16百万円との合計は299億8百万円であり、当連結会計年度の平均月商を超えていることから、緊急の資金需要に対しては一定の水準を保っていると判断しております。また、当連結会計年度末において、新規発行未定ながら発行予定額を200億円として社債の発行登録をしており、設備資金、投融資資金、借入金返済資金及び運転資金の資金需要に備えております。
② 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成のために必要となる見積りにつきましては、合理的な基準をもとに算定を行っております。
これらの見積りについて、過去の実績やその時点で入手可能な情報などから、妥当と考えられる様々な要素をもとに判断をしておりますが、見積りの前提となる条件や事業環境が変化した場合など、見積りと将来の実績が異なることがあります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。